あなたのまちの取り組みは?~2019年度「まちの子ども予算」①東京都編

各自治体の2019年度の予算案が出そろいました。東京の23区と昨春の待機児童が多かった2市のイチオシ事業をテーマごとに分類して紹介します。

◇東京都(23区、府中市、国分寺市)

妊娠期、産後も支えるために

〈墨田区〉周産期の母子を支援する産後ケア事業(408万円)

 産後の不調に苦しむ母親が赤ちゃんと一緒に病院などに宿泊し、24時間のケアが受けられる「宿泊型」と、助産師などが不安を抱える母親の家庭を訪問して育児相談などに対応する「アウトリーチ型」の二つのサービスを展開します。ともに、自己負担は2割程度となる見込みです。

〈大田区〉子育て情報メール配信の対象年齢を拡大(561万円)

 登録した妊婦や、3歳未満の子どもの保護者らにメールとLINEで配信してきた「きずなメール」の対象を就学前の子どもの保護者にも拡大します。医師や管理栄養士など専門家が監修し、おなかの赤ちゃんや子どもの成長に合わせたアドバイスや区のサービス、イベントなどの情報を提供します。7月から実施予定。

〈中野区〉不妊検査と不妊治療の費用を助成(3471万円)

 都の助成を差し引いた額に対し、区が独自に助成します。不妊検査と一般不妊治療には2万5000円を上限とし、1回に限り助成。295人の利用を見込んでいます。特定不妊治療は上限5万円で、545人分の予算を計上しました。助成回数は妻の年齢によって異なります。いずれも区への申請が必要です。

〈板橋区〉宿泊型産後ケア事業を新設(訪問型とあわせて1152万円)

 初めて出産した母親が生後2カ月以内の乳児と助産院や病院に宿泊し、育児支援を受ける費用を助成します。4泊5日以内、多胎の場合は6泊7日以内。相場は1泊3万円ほどですが、5000円ほどで利用できます。全ての母親が対象の訪問型には産後うつ防止のケアが追加されました。

〈国分寺市〉 子育て世代を包括支援(560万円)

 妊娠期を含め18歳までの子どもがいる世帯に対し切れ目のない支援をするため、7月から市健康推進課にコーディネーターを配置し、地域の関係機関をつなぐ中心とします。地区担当の保健師や子ども家庭支援センターが把握した気になる家庭などの情報を共有。児童相談所や学校、病院との連携も強化します。

保育所の量の拡充、質の向上

〈中央区〉保育所で睡眠中の安全対策強化(3507万円)

 子どもが保育所で睡眠中に呼吸停止する重大事故を防ぐため、睡眠時に監視する「体動センサー」を区立保育所の0歳児クラスに導入します。職員が直接見たり触ったりする確認と新たな機器を併せて活用することで、より安全を守ります。私立保育所には、同様の機器導入の一部を補助します。

〈港区〉保育園で医療的ケア児や障害児受け入れ(4965万円)

 2020年1月開設の「元麻布保育園」に、これまで保育所で受け入れが難しかった、日常的にたん吸引や胃ろうなど医療行為が必要な子どもや、障害のある子どもを対象としたクラスを設けます。定員200人のうち最大20人まで受け入れます。専用の保育室で、保育士と看護師を配置します。

〈品川区〉保育園の園外活動に区の施設を提供(576万円)

 区内には認可保育所や小規模保育所、認証保育所が計114カ所ありますが、半数以上に屋外の園庭がありません。園児がのびのび体を動かせるよう、園庭の代わりに5カ所の文化センターやスクエア荏原、こみゅにてぃぷらざ八潮のスポーツ室などを使う場合、使用料(1回平均約4000円)を全額補助します。

〈江戸川区〉保育園でのおむつ処分費(2742万円)

 使い終わったおむつは保護者に持ち帰ってもらっていましたが、園で処分することにします。申請があれば私立園も助成します。保護者からは「量が多くて持ち帰るのが大変」といった声が上がっていました。園側にとっても、1人ずつ仕分けていた手間が省け、より保育に専念できると考えています。

放課後の居場所を安全に楽しく

〈千代田区〉私立学童クラブ運営補助(11億4700万円)

 小学1~3年生を全員、区内の学童クラブで受け入れ、4~6年生も希望があれば入れます。その環境維持のため、私立学童クラブへ常勤職員の給与を1人当たり3万円、職員の家賃を上限月8万円補助し、障害児対応にかかる経費も充実させます。安心して放課後や長期休みを過ごせる居場所づくりを支援します。

〈台東区〉根岸こどもクラブを新設(2523万円)

 児童数が区内で最も多い根岸小学校(根岸3)の敷地で4月、学童保育所を開設します。待ち望む保護者はたくさんいましたが、クラブの場所が確保できず、長年の懸案になっていました。定員は50人。民間業者に運営を委託します。放課後を安心して過ごせる居場所づくりを進め、仕事と子育ての両立を支援します。

〈杉並区〉学童クラブの利用時間延長と受け入れ数の拡大(8億3051万円)

 4月から公立学童クラブの利用時間を延長します。学校がある日と夏休みなどの学校休業日(平日)は、午後7時まで利用できます。さらに学校休業日は午前8時から受け入れます。利用希望者が増えているため、既存クラブを改修するなどして、受け入れ数の拡大にも取り組みます。

〈北区〉学童クラブなど放課後の居場所づくり(16億5538万円)

 計8小学校で学童クラブを新設したり、学校内に移設したりして、定員を295人分拡大します。昨年4月で125人の児童が待機していましたが、その解消を目指します。全児童対象の「放課後子ども教室」も新たに5校で始め、子どもたちの放課後の居場所づくりに取り組みます。

〈足立区〉小学生の登下校見守り事業(527万円)

 小学生の登下校を保護者にメールで配信するサービスを開始します。学童保育室や児童館に寄った際もメールで連絡します。小学1年生の利用料は、区が全額助成します。2019年度は、千住など4地区でモデル事業を行い、20年度以降に全区的な展開を検討します。

支援が必要な子どもたちのために

〈新宿区〉居宅訪問型保育を待機児童にも拡大(1億1630万円)

 集団保育が困難な障害児を対象にした訪問型保育が、待機児童にも拡大されます。受け入れ枠は15人分です。障害児枠は、これとは別に5人分あります。保育士か、条例で定める要件を満たしたスタッフが自宅を訪問し、子どもを保育します。保育料は、認可保育園とほぼ同額になる見込みです。

〈世田谷区〉医療的ケア児を受け入れる通所施設へ助成(1512万円)

 医療的なケアが必要な子どもが通う施設に、区独自の助成を始めます。対象は重症心身障害児通所施設など6カ所の予定。医療的ケア児の支援は始まったばかりで、NPO法人などの施設は国の補助だけでは運営費が足りないのが現状です。区は国に、実態に見合った支援を求めています。

学校生活を快適に

〈江東区〉小中学校の体育館に空調設備を設置(4583万円)

 区内の小、中学校、小中一貫校計69校の体育館に冷暖房設備を導入します。10年間のリース契約で、総事業費は17億7743万円の見込みです。熱中症対策や、卒業式など行事の時の寒さ対策、災害時の避難所機能の強化にもなります。部活動などで使用頻度の高い中学校は8月までに、小学校は来年2月までに設置する予定です。

〈目黒区〉小中学校の体育館に空調設置、中学校に冷水機を増設(3716万円)

 小学22校、中学9校の全公立学校体育館に空調を設置します。現在、教室の空調は完備していますが、体育館にはありません。体育館は災害時の避難所にもなるため、利用環境を整えます。また、部活動などで夏場の熱中症の危険がある中学校には、冷水機を全校に1台ずつ増やします。

〈葛飾区〉中学校の体育館にエアコンを設置(1億3700万円)

 改築を予定している3校を除く21校の中学校の体育館にエアコンを取り付けます。体育館は、子どもたちが安全に過ごす場であるとともに、災害時には区民の避難所になります。小学校でも同様に、改築予定や既に設置している5校を除く全校で、2021年度までにエアコンを設置する予定です。

地域で触れ合い、育む

〈渋谷区〉 地域の子どもたちの居場所「こどもテーブル」(5600万円)

 地域の大人が食事や学習支援を通じて子どもたちを見守る居場所事業を、19年度中に100カ所に広げるのを目指します。元個人宅で区社会福祉協議会が活用してきた「景丘の家」を建て替えて3月に新装オープンし、事業の中心地とします。幅広い世代の交流スペースとして親しんでもらう予定です。

〈豊島区〉小さな公園を住民参加で活用(400万円)

 区民1人当たりの公園面積が23区で最も小さい豊島区ですが、小さな公園は住宅地の中にたくさんあります。子どもの遊び場や保育園の園庭代わりに使われている小さな公園を、もっと魅力ある場所にして多くの人に活用してもらうため、地元住民と一緒にワークショップやイベントを開きます。

〈荒川区〉スーパーから子ども食堂への食品提供で、食品ロスも削減(70万円)

 余っている食品を、子ども食堂や確保に困っている家庭に届ける「フードドライブ」で、参加対象を個人からスーパーなどの事業者にも広げます。区が無料で配送し、食べられるのに捨てられる「食品ロス」もさらに削減します。地域で支え合う仕組みが構築される効果を期待します。

〈練馬区〉民間カフェで育児相談や仲間づくり(約344万円)

 家庭で子育てをしている保護者を支援する取り組みです。カフェと協働して店内のスペースを活用し、子どもが遊んだり、保護者が交流したりできる場をつくります。地域の保育士や幼稚園教諭による子育て講座なども予定しています。親子ともにリフレッシュしてもらうことが狙いです。

すべての子の学びを支える

〈文京区〉生活困窮世帯への学習支援を高校生世代にも拡充(3026万円)

 経済的に苦しく、学習や生活環境に課題がある小中学生に行ってきた学習支援や生活相談を、高校生世代にも行います。生活保護受給世帯などの高校生や高校中退者、中学卒業後に進学・就職をしていない若者などが対象です。孤立感を解消させ、学力を向上させる効果が期待されます。

〈府中市〉不登校の生徒に家庭学習用タブレット端末(42万円)

 不登校の小中学生が復学を目指して学ぶ「けやき教室」にタブレット端末10台を配備し、家庭での学習用に生徒に貸し出します。自分のレベルに応じて国語と数学のドリルができ、分からなくなったら教員にメールを送って質問もできます。勉強についていけず、不登校になった生徒もいることから、生徒の自発的な学習を後押しします。

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