コロナ禍のNICU、苦渋の面会制限 親なのに赤ちゃんに会えない…愛着づくりに影響も

(2021年3月9日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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NICUでは、感染防止対策を講じながら、親子の愛着づくりを支援する取り組みを続ける(杏林大医学部付属病院提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、リスクを抱えて生まれてきた赤ちゃんを預かる新生児集中治療室(NICU)にも影響を与えている。出産直後から離れて暮らす親子の愛着関係を育むための支援に取り組むNICU。だが、感染防止のため、面会が制限されて親子が十分に触れあえず、現場の看護師は葛藤を抱えている。 

以前は24時間、きょうだいも面会できた

 「赤ちゃんがNICUに入院している親の精神的な負担は、コロナ禍でさらに重くなっている」。杏林大医学部付属病院(東京都三鷹市)のNICUで働く看護師の菊池一仁(かずと)さん(36)はこう話す。菊池さんは、日本看護協会が定める、新生児集中ケアの認定看護師でもある。

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菊池一仁さん

 「赤ちゃんの病気や障害などを受け入れ、退院後の子育てに向き合うには、入院中の関わりが重要」。コロナ以前の同院は、面会は24時間可能、感染症対策で禁じる病院もあるきょうだいの面会も認めるなど、親子の愛着を形成できる支援を重ねてきた。

「週3日、1日1時間」スキンシップ減少

 しかし、コロナ禍の今は親が赤ちゃんと面会できるのは週3日、1日1時間まで。繰り返しできていた沐浴(もくよく)や授乳など世話の練習も回数が限られるように。

 そんな中、親子のつながりを何とか保とうと、短時間の面会でもスキンシップができるようサポート。面会できない日の赤ちゃんの様子を「育児ノート」に記録したり、写真を撮ってデータを渡したりと工夫を重ねている。

 杏林大医学部付属病院のNICUは15床。染色体異常などによる比較的重い病気や、1000グラム未満での出生など、よりリスクの高い新生児の治療やケアを担い、東京・多摩地域の基幹的な役割を果たしている。

同じ境遇の親子が交流する場も開けない

 退院に向けて愛着を深める多くの家族がいる一方、「病院や移動中の感染が怖い」と不安を感じ、面会の頻度が減る家族も。「物理的な触れ合いが減り、親の不安が高まっているのではないか」。今後同院ではリモート面会の導入なども検討している。

 NICUを退院した赤ちゃんには、医療的ケアを必要とする場合もある。平常時も親の負担や不安は大きいが、感染リスクのある今は、体調のちょっとした変化にも敏感にならざるを得ない。

 「同じ境遇の親子が集まり交流する場も開けない」と、菊池さんは孤立を深めている家庭が多いとみる。「コロナ禍で生まれた新しい命を守り、育てるために全力で闘う親を社会全体でサポートしてほしい」

「リスクの高い赤ちゃん、親の不安…支える仕組みが必要です」二葉乳児院副院長・長田淳子さん

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長田(ちょうだ)淳子さん

低体重で出産 申し訳なさと戸惑い

 親元で暮らせない乳幼児の養育の仕事に関わり、この時期の愛着形成がその後の子育てにとても重要であると感じています。

 私も10年前、長女を妊娠30週で出産しました。1000グラムを少し超える低体重で、NICUに10週間入院。抱っこも、保育器の中に手を入れて持ち上げるような形でした。その4年前に長男を出産した後の触れ合いとは全く違う状況に戸惑いました。「本当に自分が産んだのかな」と思うことも。一方で早産になって申し訳ないという気持ちも強かったです。「しっかり頑張らなきゃ」と毎日必死に通院していたと思います。

NICUのスタッフと親たちが支えに

 長女は退院時にようやく2500グラムほどに。ミルクを飲ませる時も「息が止まっちゃうのでは」と心配になりました。感染症にかかってはいけないと外に出るのも怖かったです。

 月1回の受診時にNICUのスタッフに相談できたのは心強かったです。NICUに赤ちゃんがいる親たちと入院中からつながれたことも支えになりました。

 現在、リスクの高い赤ちゃんの治療や親の支援をするNICUは本当に大変な状況ではないでしょうか。医療機関と自治体が連携し、親子を支える仕組みが必要です。

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