〈坂本美雨さんの子育て日記〉95・好きなものを堂々と好きでいてほしい

(2026年3月11日付 東京新聞朝刊)
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銭湯に入った後にあずきソフトとおみそ汁で至福の時間の娘

 坂本美雨さんの子育て日記

家庭のルールはさまざま

 私は口うるさい親だなぁと思う。娘が見るものに関して、これはいいね、これはまだ触れてほしくないな、といった意見ははっきり言ってしまうほうだ。もちろん、どれだけ禁止したって興味を持ったものには遅かれ早かれ必ず触れるもの。それは承知の上で、子どもが見るものを親が線引きするというのは必要だと思っている。コントロールではなく、目を届かせておきたい。母としてと、職業的な観点が入り交じるので娘としてはさぞかしうるさいことだろうと思うけれど、エンターテインメントがどれだけ子どもの価値観に影響するかを知っているから。

 しかしここ数年は、彼女の純粋な好みとは別に、友達との会話についていきたいから見たい、ということもある。友達が見ているものをうちでは見られないということも起こる。例えばうちではYouTubeは目的がある時のみ、Netflixなどのサブスクで映画を見るのは自由で、内容や時間は目を配っておく、というようなざっくりルール。家庭のルールはさまざまだから、周囲とはズレが生じることもある。先日、娘がポロポロ泣き出したことがあった。話を聞くと、友達との会話のズレでガマンをためていたことがわかった。厳しすぎるのかもと反省点もあったけれど、この先同じような構図は付きまとう。ここで友達と全てを共有できれば済む話でもない。根っこには自分が好きなものは友達とは違う、という後ろ向きな気持ちがあるような気がした。

私も涙が出てしまった

 彼女は、「コウノドリ」などの医療ドラマが好きで、何周見ているかわからないほど。「孤独のグルメ」「深夜食堂」「かもめ食堂」などのごはんにまつわる作品も大好き。刺激的なものよりも、人間ドラマというのか、しみじみと心の動きが描かれるものに熱中している。そんな彼女の趣味嗜好(しこう)はとても面白いと思うし、幅広い世代の人と話せるというのもすてきなこと。

 自分の好きなものに自信が持てないというのは、傷つくもの。私自身も若い頃に、好きだったものを親にも周りにも理解されず、心のどこかで「私が好きなものはわるいものなんだ」と思っていた。好きなものを認めてもらえないことは、自分への否定に思えた。私たちは自分が好きなもので形作られる。だから、好きなものを堂々と好きでいてほしい。きみの好きなものはすてきだよ、と言いながら私も涙が出てしまったのは、私もそう言われたかったからかもしれない。

坂本美雨(さかもと・みう)

 ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。

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