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〈坂本美雨さんの子育て日記〉33・好きな人の名を書きたくて

  (2019年8月30日付 東京新聞朝刊)

坂本美雨さんの子育て日記

ひらがなを猛スピードで覚え始めている娘

ひらがなを急速に覚えた理由

 娘がすごいスピードでどんどんひらがなを覚えている。それは、だいすきな人に手紙を書きたいから。私のヘアメークも担当してくれている美容師さんと、一瞬で仲良くなった娘。私を飛び越えて、ふたりきゃあきゃあとじゃれあっている姿は(だいぶ年の離れた)兄妹のようである。


〈前回はこちら〉32・センチメンタル母ちゃん 3歳が終わっちゃう…


 濃厚なふたりの世界なので、かあさんはちょっと取り残された気持ちで横で笑っている。先月、切りたての私の髪をなでて「かわいいねぇ…○○ちゃん(自分の名前)も切りたい」と言うので、意を決して生まれて初めてのヘアカットをすることになった。

決意の初カット…乙女の表情

 彼はご実家も美容室。自身が美容室で育ったからこその思いがあり、この場所にまずなじんでもらうこと、最初が肝心なんです、と、たっぷり時間をとってまずサロンで自由に遊ばせてくれた。リラックスして彼と向き合い、髪を切られる娘は、完全に乙女の表情。前髪を眉の上まで切るといっきに、「ばーば」矢野顕子の雰囲気が漂い、思わず笑ってしまう。本人もとても気に入ったようで、鏡の中の自分を何度ものぞき込む。

 その数日後、彼の名前を書きたいと言ってきたのだった。見本を書いてみせるとまずそれを丁寧になぞり、そして10枚ほど続けて書いていくうちに見本を見ずにスラスラと書けるようになった。なかなか集中力の続かない娘が、こんなに熱意を傾けることは珍しい。

「大好き」と伝えられる幸せ

 私は、遺言のように意識的に伝えていこうと思っている事をいつなにがあっても見つけてもらえるようにiPhoneのメモに書き残している。そのうちの一つは、好きな人にはちゃんと伝えなね、ということ。その昔、「大好きな人に大好きだって伝えられる幸せ、がんばって生きてきたごほうびかもね」という歌詞を書いたことがあった。好きを返してもらえたとしたならそれはもう奇跡的で、天にも昇る気持ち。だけど、誰かを好きだと思えて心がめいっぱい動くこと、そしてその人に思いを伝えられることだけでも、なんてうれしいことだろう。

 またもしかしたらその人の気持ちを動かし、人生に触れることができる、それこそが生きている醍醐味(だいごみ)だなぁ…なんてことを心底実感した時に書いた言葉でした。娘が今の年(4歳)から好きだと伝える喜びを感じているのなら、本当にうれしいなと思う。好きな人の名前を書きたくて文字を覚えるなんて、涙がでそうなほどすてきなこと。その純粋な気持ちを抱いた娘の顔は、ひときわいとおしく、光って見える。 (ミュージシャン)