〈清水健さんの子育て日記〉18・息子と二人三脚 頼って、頼られて

(2019年12月27日付 東京新聞朝刊)

清水健さんの子育て日記

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この手を離しません

「お外にいこう!」連れ出してくれる息子

 「パパ、お外にいこう!」。冬空の下、息子が誘ってくれたのは洗車。「まだこっちに水がついてるよ」「あっ、こっちにも」と忙しそうにタオルを持って車の周りを動き回る。寒いはずなのに、手も冷たいはずなのに。

 おそらく、洗車じゃなきゃいけない理由はなかったと思う。なんだかあまり外に出たくないな、少し疲れたな。そんな表情をしていたのかもしれない。こういう時には決まって、息子が元気づけようと外に連れ出してくれます。本当は僕が支える側なのに、どっちが支えているんだか…。


〈前回はこちら〉17・七五三 天国の妻へ「ママ5歳、おめでとう」


 妻の闘病中と一緒です。血液の検査データがなかなか基準の数値にならなくて思うように治療が進まず、僕は悔しくて、ひとり病室を抜け出し、涙していたのがこの季節。一番、悔しいはずの妻は、そんな僕の姿をおそらく知っていて、とびきりの笑顔で過ごしてくれました。僕は、その笑顔にどれだけ心を救われたか。涙が落ち着くまで、ホットの缶コーヒーで冷たくなった手を温めていたな。この時季はどうしても思い出すことが多くなってしまうけど、あの時、ベビーベッドの上にあった小さな笑顔は、ママそっくりに、いま、僕たちのそばで笑ってくれている。

 「寒かったよな」。大きくなったけど、まだまだ小さい手を両手で包み込んで温める。息子自慢ではないけれど、わが子に感謝です。

シングルファーザーでも、一人じゃない

 「112日間のママ」の出版を機にご依頼いただく講演会。今年も多くの舞台に立たせていただきました。同じ子育て世代の方や、中学生、高校生への講演会が多かったように思います。思い出す-。その作業に疲れてしまった時もあったけど、ママが好きだったのはマイクを持つパパの姿だったはず。だから、「伝える」を続けています。

 この姿、妻ならなんて言うだろう。「みんなにありがとう、ですね」かな。家族、お隣さん、幼稚園の先生、ママ友、パパ仲間、皆さまに支えられてのいま。僕はシングルファーザーだけど、決してひとりではない子育て。この環境が多くを教えてくれ、子育てが多くのことに気づかせてくれています。息子の成長と、親としての成長は二人三脚で、もちろん親がしっかりしなくちゃいけないんだけど、頼り頼られています。

 この「子育て日記」を通じて、「私も一緒です!」との言葉をたくさんいただいています。みんなでの子育て。「パパ!」。今日も息子が笑顔で呼んでくれています。(フリーアナウンサー)

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