〈中倉彰子さんの子育て日記〉50・勇気くれた「兄弟子」

(2016年12月16日付 東京新聞朝刊)

中倉彰子さんの子育て日記

中学生と対戦

 シンの保育園のクラスに、中学生が職業体験で来てくれています。この取り組みは、中学生のうちからさまざまな仕事を体験し、働くことの大変さと大切さを感じてもらいたいと、東京都府中市と市内の事業所の協力で、2005年ごろに始まったそうです。園児たちにとっても、お兄ちゃんやお姉ちゃんとの触れ合いは、新鮮でとてもありがたいことです。

 シンは先日、そのお兄ちゃんと将棋を指したことが楽しくて仕方がなかったみたいで、私の顔を見るなり「ぼく中学生のお兄ちゃんに勝ったんだよ!」と大興奮しながら報告。その一方で、「あーでも、今度もっと強いお兄ちゃんが来るって言ってたなぁ。その人とやって負けるのやだな」と心配もしていました。

 夫の弟子で、高校生のコウタ君がわが家に泊まりにきた時も「保育園で強いお兄ちゃんがきたら、コウタ君一緒に来てくれる?」と頼んでいました。実はコウタ君は、プロを目指す人を養成する機関「奨励会」に所属するレベルなのです。強力な助っ人を呼ぼうとしているシン。こらこら自力で頑張りなさい(笑)。

 その後、保育園の職業体験に来たのは、なんとシンのクラスの先生の元教え子だったそうです。そのお兄ちゃんとシンの新旧教え子での対戦になり、シンが勝ったことを先生がうれしそうに話してくれました。多分、お兄ちゃんは本気を出さなかったと思うのですが、こういうことが、子どもにとって大きな自信につながるんでしょうね。

楽しむ将棋

 シンの通うクラスでは、将棋は1対1でやるより、チームで対戦する方が多いようです。先日、クラス役員のお仕事で保育園に行った時に少し時間があったので、子どもたちに交じって、チームで将棋を指しました。「ここから先に駒が入ると裏返しにして変身できるんだよ」と言うと「わー!」と歓声が上がったり、同じチームの子が駒を取ると女の子は「やった、やった」と一緒になって喜んだり。その様子を見ていると、こんなふうにワイワイ言いながら楽しむ将棋もいいなぁ、と思いました。

 以前は、大会に出るときはお姉ちゃんと一緒に出る団体戦じゃないといやと言っていたシン。でも今は「次の子ども大会には1人で出る!」と宣言しています。中学生のお兄ちゃんたちの来訪は楽しい思い出とともに、前に一歩踏み出す勇気と力をもらう貴重な体験になりました。(プロ棋士)

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