PTAの全国組織「日P」、1年で会員100万人減 不適切な運営への不信感で相次ぐ退会 「保護者代表」役も外されて…

山田雄之 (2025年5月18日付 東京新聞朝刊)
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相模原市PTA連絡協議会が会員向けにホームページで、日本PTA全国協議会からの退会を報告した文書

 公立小中学校のPTAの全国組織「日本PTA全国協議会(日P)」の会員数(児童生徒数)が、2024年度の1年間で100万人以上減った。不適切な運営など活動への不信感から、都道府県や政令市の会員団体が相次いで退会したためだ。今年3月には、教育政策を議論する文部科学相の諮問機関の中央教育審議会(中教審)の委員からも、日P関係者は外れた。識者は存在感の低下を「危機的状況」とみている。

「活動不全の日Pに加入」への疑問

 「日Pが正常な活動を継続することは困難であると言わざるを得ない。正会員として活動を続けるのは、会員の理解を得られないと判断した」「PTAの存在意義を脅かすような活動不全に陥った状態の日Pに加入していることへの疑問も日に日に増していった」

 静岡県、千葉県のPTA連絡協議会は各会員に向け、日Pを24年度末で退会することを決めた理由をホームページ(HP)上でこう説明している。

 日Pなどによると、群馬、千葉、埼玉、静岡、解散した岡山の5県と横浜、相模原の2市が昨年度末で退会。さいたま市も昨年6月に抜けた。昨年度は約699万人の会員がいたが、相次ぐ退会で計100万人以上が減少し、本年度は600万人を割り込んだとみられる。

 多くの団体が理由に挙げるのが、静岡県や千葉県が言及するように日Pの不適切な運営など活動を巡る不信感だ。

赤字や背任事件への対応が不十分

 PTAは学校単位、市町村、都道府県・政令市、そのトップに日Pが位置するピラミッド型の組織構造となっている。保護者が各校のPTAに支払う会費のうち、子ども1人あたり年10円が日Pに納められて活動の原資となる。

 日Pは研究大会を開いたり、広報紙の発行などをしてきたが、22年度決算で約5000万円、23年度は約2900万円の赤字を計上。この赤字を巡り、下部組織が公開質問状を出すなどして説明を繰り返し求めてきたが、望まれるような対応をしてこなかった。

 昨年7月には日Pが発注した工事代金を水増しし、約1200万円の損害を与えたとして元参与が背任容疑で逮捕された。さらに公益目的事業に税制優遇がある公益法人となっている日Pに対し、内閣府は同12月、事務局長が長期にわたり不在となるなど運営体制が不適切だとして是正勧告を出し、背任事件への対応も不十分だとした。

「PTAにピラミッド構造は適さない」

 日Pは勧告を受け、対応をまとめた改善計画を策定し、HP上で今年4月に公開したが、その前に退会を決める団体が相次いだ。日Pは「こちら特報部」の取材に「脱退・離脱が相次いでいる現状を重く受け止めている。運営に対する信頼の低下が一因と認識しており、健全化を着実に進める」と回答した。

 規模縮小の日Pにさらなる逆風が吹く。中教審では、長らく会長や役員経験者が「保護者代表」として委員を務めてきたが、3月からの新体制では選出されなかった。日Pに受け止めを尋ねると、「教育政策への関与手段が一つ減少したことを意味する。保護者の声を反映させる新たな手段を模索していく」と応じた。

 存在感の低下が免れない日Pについて、同志社大の太田肇名誉教授(組織論)は「運営が透明化されず、説明不足も相まって下部組織の信頼を失っている。収入減で組織運営が難しくなることも予想され、危機的な状況だ」と指摘し、こう提言する。「加入が任意のPTAにピラミッド構造は適さない。必要性を認めてもらうには、トップに君臨するのではなく、下部組織へのサービスに徹するような意識改革が必要だ」

元記事:東京新聞デジタル 2025年5月18日

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