英語で筆記体、今の子どもたちは習わない? いつから? 理由は? アメリカでは逆の流れも

(2026年1月30日付 東京新聞朝刊に加筆)
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今の子どもたちは、英語の筆記体を習わなくなった。その背景を調べてみると…

 「今の子どもたちは、学校で英語の筆記体を習わないと知った。なぜ教えなくなったの?」という質問が60代の女性から寄せられた。調べてみると、1998年の中学校学習指導要領の改定(2002年施行)で、必修から外れていた。

PC普及で優先度低下、週5日制も影響

 文部科学省外国語教育推進室の担当者によると、1998年の学習指導要領で「生徒の学習負担に配慮し、筆記体を指導することもできる」と告示。それまで40年にわたり、英語で必修だった筆記体の学習が、必修ではなくなった。

 改定の背景について、担当者は「パソコンの普及で手書きが必要な場面が以前より減少し、筆記体に代わり活字体がメインになった」と説明する。さらに、同じ改定で学校完全週5日制への移行が決まったことも影響。土曜日が休みになり授業時間が年70時間(週当たり2時間)減るため、「英語も授業内容を厳選し、コミュニケーションをより重視するようになった」。

 ただ、日常生活で手紙やカードを書く際に使用することもあり、「子どもの興味関心を引くものとして、負担を考えた上で、教えることは可能」とされた。

英語教諭「時間が余れば紹介する程度」

 首都圏の公立中学校に勤務する40代半ばの英語教諭は「教科書では筆記体は付録扱い。学期末に授業時間が余れば『筆記体でグリーティングカードを書いてみよう』と紹介する程度」と話す。改定のたびに教科書で筆記体に割かれるページが減っているといい、「本年度から新しくなった教科書では、それまでの半分になり、ついに2分の1ページになった」と驚きを声ににじませる。

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改定のたびに、筆記体についての記載が減る英語の教科書

 とはいえ、生徒たちは興味はあるようで、黒板でサラサラッと筆記体を書いてみせると歓声が上がるという。「1人1台タブレットを持っているので、自分の名前を筆記体でどう書くかを調べて練習している生徒もいる」

 発展的な内容として取り入れてきた現場でも、変化が見られる。東京都大田区にある私立小「清明学園初等学校」では、「サインが必要な場面があるので、名前が書けるように」と小学5年時に筆記体を教えてきた。しかし、ブロック体を使う場面が多く、担当教員の入れ替わりもあり、2022年度以降は指導から外したという。

米国でも同様 ただ近年は復活の動きも

 英語を母国語とする国ではどうなっているのだろう。実は米国でも同様の動きが見られる。筆記指導を研究する専門家団体「ザ・ハンドライティング・コラボレーティブ」によると、以前は多くの州で必修だったが、2010年発表の全米共通の学習達成基準(コモンコア)で筆記体が必修から外れた。日本と同様、パソコンやタブレット型端末の普及で、キーボード操作を優先して学ぶ必要が高まったためだ。

 東京・新橋で、旅行していた米コロラド州の女性(45)に尋ねると「私が子どものころは8~9歳で学んだが、今の子は習わない。タイピング中心だしね」。中学生の息子(14)と娘(12)は「ブロック体しか使わない。筆記体は習っていなくて書けないし、読むのもすごく苦手」と冷めた口調だった。

 ただ、同団体によると、近年、指導を復活させる州が急増し、半数近くが再び義務化。2024年にはカリフォルニア州がその流れに加わった。一方、全英手書き協会によると、英国では6~8歳で筆記体を学ぶ。協会のメリッサ・プルンティ会長は「手書きの速度は、文章の質やアイデアの展開に深く関わる」と述べる。

筆記体が書けなくて困ることはないの?

 質問を寄せた60代の女性は「筆記体を使わなくても不便ではないのか、疑問。手紙をやりとりする友人ができて困ることはないのかな? そのあたりを詳しく知りたい」と続ける。

写真:筆記体のサンプル

流れるような筆記体(日本ペンマンシップ協会会長の阿部久代さん提供)

 日本カリグラフィースクール(東京・銀座)で筆記体(「英語での習字」といわれるペンマンシップ)の講座を担当する、日本ペンマンシップ協会の阿部久代会長(58)は「筆記体を知っているものだと思って講座で教えていたが、30代前後の若い人の中には『つなげて書いたことがない』という人もいて、はっとした」と打ち明ける。「昔はイラストに筆記体でサインを入れたりしていたし、サインをするときに筆記体でかっこよく署名したい、という需要は今もある。ただ、デジタルが発達した日本では、実生活で『書けなくて不便』という場面はない」と話す。

ブロック体中心で「単語の覚え方も変化」

 実際に子どもたちに英語を教える現場の声も聞いた。埼玉県東南部エリアで英会話教室「カミング英会話」を主宰する山下智子さん(49)は「今の子どもたちは学校で習わないので、筆記体で自分の名前を書けない。ブロック体で書く習慣が身についているので、例えばアルファベットの『O』の字も、上から書き始めるのではなく、下から丸を書き始める子もいる」と明かす。

 さらに、単語の覚え方にも変化を感じるという。「単語をひとまとまりとしてとらえられず、1文字ずつ覚えている印象。2行にまたがって単語を書く際に、単語の途中で改行してしまう子もいる。『take』という単語を書くのに、1行目に『ta』を書いて、2行目に『ke』を書くような…。日本語で言うと、漢字のへんとつくりをバラバラに書くようなイメージ」

 前出の英語教諭は「私自身は高校時代、『量を書くには筆記体の方が断然早い』と英語の先生に言われて、受験勉強のように人に見せるものではなく、たくさんこなしたい時に筆記体を使うようにしていた」と振り返る。「子どもたちはいろいろな場面で筆記体を目にしているし、『かっこいいな』と興味も持っている。長い目で見れば使える方がいいのかも。でも、年々、学習内容も単語数も増えるばっかりで、筆記体を教える時間はそぎ落とされてしまっているのが現実」と寂しそうに語った。

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