転校する子どもに必要なケア 情報収集のポイント、親のNGワードは?
学校との連絡は密に 子には「何をしたい?」
「転校は子どもの環境と人間関係を一変させる。準備やケアが大切」。東京・上野にある一般社団法人「不登校支援センター」東京支部(本部・名古屋市)のカウンセラー羽根千裕(ちひろ)さん(30)は話す。センターには不登校関連の相談が年間約5000件寄せられるが、転校が原因となる例もあるという。
転校前にすべきこととして羽根さんが挙げるのは、情報収集や子どもとの丁寧な話し合いだ。必要な手続きから、ぞうきんや体操着といった細かい物まで何を準備すればいいのかはもちろん、「できるなら行事を見学したり、通学路を親子で歩いたりしては」。今年は臨時休校の影響で、入学式や始業式などの予定が急に変わる可能性もある。学校との連絡は例年以上に密にしたい。
できる限り子どもの希望に沿いたいのが転校の時期だ。一方の親がその時期まで転居を延ばすなど、可能であれば柔軟に対応するのがいい。時期や、勉強やスポーツなど転校先で何をしたいかなども話し合えば「子どもが自分のこととして転校について考えられるようになる」と助言する。
意思を尊重 「あなただけどうして」はNG
センターに寄せられた相談例を基に親や本人が取るべき対応を見ていこう。
【例1=小2女子】共働きの両親の都合で夏休み明けに転校。転校先のクラスは男女の仲が悪く、男子と話したのを理由に女子の間で仲間外れに。1カ月ほどで「行きたくない」と言い始めた。理由を尋ねてもはっきりせず、両親とも責任を感じて苦しんだ。
親は事情を問い詰めてしまいがちだが、本人も理由を自覚できなかったり、説明が二転三転したりすることも。「行きたくない、という意思を尊重することが大事。その上で子どもの言動に振り回されずに向き合って」と羽根さん。先回りして隣接校などへの転校を手配する親もいるが、ひどいいじめで安全が脅かされている場合などを除き意思を確認することが必要だ。
この児童は、センターの勧めで学校と話し合った結果、担任の同級生たちへの指導で環境は徐々に改善。クラス替えもあったおかげで、翌年からは通学できるようになった。
その他、言ってしまいがちなNGワードは、きょうだいと比べて「あなただけどうして順応できないの」といった言葉。「いつになったら行けるの」という言葉も、子どもにプレッシャーを与えてしまうという。
大人でも難しいスキル 安心できる居場所を
本人が自分の性格をよく知ることも大事だ。
【例2=中1男子】進学した私立の進学校で自信をなくし、入学後2カ月で地元の公立中に転校。しかし「落ちこぼれた、と見られているのではないか」と思い込み、1日行っただけで通わなくなった。
生徒は、センターの職員と話し合う中で自分の性格を分析。「プライドが高く負けず嫌い」と自覚した。「まずは自信をつけよう」と塾に通うことを決めた。落ち着いて勉強できたことや、同じ中学の同級生と顔見知りになったことが変化のきっかけになった。3年の夏休み明けからは普通に登校し始めた。
2つの例はいずれもうまくいったが「その子によって必要な対応は違う。正解はない」と羽根さん。「事前の情報収集に自己分析、新たな環境への適応…。大人でも難しいスキルが求められるのが転校」と指摘。相談機関を含め「本人が安心できる居場所をつくることが大事」と呼び掛ける。
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