宿題も定期テストも廃止 公立校の”当たり前”の改革者・工藤勇一校長の挑戦〈多様な学びの現場から・2〉

高橋可鈴
子育て世代がつながる
 「宿題」や「定期テスト」は本当に必要か? 公立中学校の校長として学校の「当たり前」を改革してきた工藤勇一さん(60)が4月、横浜創英中学・高等学校(横浜市神奈川区)の校長に着任しました。「現在の教育は、教員が生徒に与えることが当たり前になっていないか」という危機感はそのままに、生徒たちが自ら考え取り組む自律的な学びへの挑戦を続けています。
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自宅にいる生徒らとオンラインでのホームルームに参加する工藤勇一校長㊧(一部画像加工)

オンライン授業は「自律型・効率型」に転換するチャンス

 4月中旬。新型コロナウイルスの影響で休校中の横浜創英中学・高等学校。生徒のいない教室で、中学2年生の担任教員がビデオ会議アプリ「Zoom」を使いホームルームを行っていた。始業式と入学式が中止になり、生徒と直接会えていない工藤校長も飛び入りで参加。「問題です。私の好きなサッカーチームはどこでしょう。1・鹿島アントラーズ、2…」。生徒たちは立てた指の本数で答えていた。

 創英中で4月から始まった「オンライン授業」では、生徒はウェブ上の「学習室」にアクセス。同級生や上級生と、文字や音声で質問し合うなどして学習を進める。教員は「学習室」で見守り、必要があれば教科の質問に答える。

 工藤校長はオンライン授業を、生徒が一斉に教員の話を聞く授業から、自分で学ぶ「自律型」や学びたいものを学ぶ「効率型」の学習に切り替えるチャンスだと考えている。生徒同士の学び合いにも期待する。

教育の理念について話す工藤勇一校長

教育の理念について話す工藤勇一校長

自主性を育てるため、生徒に体育祭を運営させてみたら…

 3月末まで6年間、校長を務めた東京都千代田区立麴町中学校で、生徒の自主性を育てる上で必要なことは何かを突き詰めた。宿題、定期テストをやめ、単元ごとの小テストで理解度を測り、出題範囲を示さない年5回の実力テストで学力を確認できるようにした。

 今春卒業した元生徒会長の新井晟矢(せいや)さん(15)は、体育祭の準備と運営を通じて、自分で考え行動する「自律」と、互いを認め対話する「尊重」の心が養われたと振り返る。

 工藤校長からのミッションは「生徒全員が楽しめる体育祭を」だった。病気で走れない生徒もいる中で全員リレーを種目に入れるかを巡り、意見が分かれた。「どうすれば全員が楽しめるか」に立ち返り、仲間を抱っこしたり、騎馬戦のように上に乗せて運ぶリレーにした。「自分たちでつくり上げた達成感は大きかった」

 新型コロナの終息が見通せない中、工藤校長は生徒のために、オンライン上の学びの場を整えていく。ただ、「集団でなければ学べないこともある」という。自身も自由な校風の高校で級友たちと競い、励まし合う中で自律の大切さを学んだ。「学校は人の人生を変える出会いがある場所だから」

こどもの日特集「多様な学び」を考える

 今日は「こどもの日」。新型コロナウイルスの感染拡大で、休校が続く中、子どもの学びについての議論も活発になっています。子どもたちが自らやりたいと思う気持ちを尊重し、探求できる学びの場を記者が訪ね、「学校での一斉授業」だけではない「多様な学び」について考えます。

〈多様な学びの現場から〉

1・学校とは違う学び  子どもの「どうして?」の力を信じる、松戸の探求型スクール

2・宿題も定期テストも廃止 公立校の”当たり前”の改革者・工藤勇一校長の挑戦

3・外国籍の子どもが多い横浜市南区 休校で孤立しないよう、学習支援を続ける信愛塾

4・障害があっても、創作意欲は育つ 自分を丸ごと肯定される練馬のアトリエ

〈多様な学びを広げるために〉

「多様な学び」目指す教育機会確保法の施行から3年 学びの現場は変わったか

「分ける」ことが偏見や差別を生む 障害のある国会議員・木村英子さんが考える「インクルーシブ教育」の意義

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