高校生と本をつなぐ「ソムリエ」浦和第一女子高の図書館司書・木下通子さんの熱い思い

飯田樹与 (2020年9月28日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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「本と人をつなぐのは私の天命です」と話す木下通子さん=いずれも浦和第一女子高校で

 浦和第一女子高校(さいたま市浦和区)の図書館には本を借りたり、調べものをしたりと、多くの生徒や教員が足を運ぶ。ようこそ、図書館へ―。出迎えるのは、同校図書館司書の木下通子さん(56)。本と人を結ぶ、いわば「本のソムリエ」として、来館者が必要とする情報を提供している。

年間4万4000冊を貸し出し、生徒1人当たり36冊

 約5万7000冊の蔵書を誇る浦和第一女子高校の図書館。書店に負けない品ぞろえを自負する新刊コーナーに、ジャンルやレベル別に整理された英語の多読本コーナー。ジェンダーやSDGs(持続可能な開発目標)といった今日的なテーマを扱うミニコーナーもあり、興味を引かれて思わず手が伸びてしまう。昨年度1年間の貸出冊数は4万4259冊、生徒1人当たりでは36.9冊にもなるという。

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品ぞろえ豊富な新刊コーナー(手前)に、約1万冊ある英語の多読本コーナー(奥)

 「図書館は情報が集まる場所。『困った時は図書館に行こう』になってほしい」。進路に悩む生徒には、会話の中から関心事や好きなことをくみ取り、関連分野の本を紹介して視野を広げるお手伝い。調べ物をしたければ、蔵書や論文、統計資料の検索方法を教え、時には自治体や大学の図書館から資料を取り寄せることも。教員にも授業で活用できそうな本を伝え、積極的に生徒の学びに関わる。

思春期や親の病気に悩んだ時期、本に助けられた

 活動の場は図書館内にとどまらない。2010年度から県内の高校図書館司書が高校生に薦めたい本を選ぶ「イチオシ本」の企画をスタートし、今では地元書店や出版社も巻き込む恒例企画に。おすすめ本の紹介を聴いて最も読みたくなった本に投票する書評合戦「ビブリオバトル」にも普及委員として携わっている。

 もともと読書が好きで、本に関わる仕事がしたかった。夜間大学に通いながら、大学図書館でのアルバイトをきっかけに図書館司書の道へ。振り返ると、多感な思春期や親の病気に悩んだ時期など、つらく苦しい時には本に助けられた。「小説の世界に浸ることで、心が軽くなった」と語る。

子どもが本に親しむため、小学校に図書館司書を

 本を通して児童生徒の視野を広げるだけでなく、情報の集め方、扱い方を教える学校図書館司書。県立高校には全校に配置されているが、多くの市町村立学校では1人の司書が複数の学校を担当していたり、1年単位の非正規採用だったりして、業務に集中しづらい状況にあるという。子どもたちが本に親しむ習慣をつける上で、小学校への図書館司書の配置が特に重要だと訴える。

 「自己責任」と切り捨てられ孤立しがちな雰囲気に、情報が膨大にあふれる今の時代。子どもの貧困が増え、学びや情報に接する機会に差が生まれると、学校図書館の役割はさらに大きくなるとみる。「子どもたちには必要な情報を読み取り、自分で考える能力が必要になる。そうした力を育む場でありたい」 

木下通子(きのした・みちこ)

 1964年、東京都生まれ。東洋大Ⅱ部国文学科在学中の1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し、高校司書になる。2018年から浦和第一女子高に勤務。著書に「読みたい心に火をつけろ!-学校図書館大活用術」(岩波ジュニア新書)がある。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年9月28日

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