制限下で不安をため込む子どもたち スクールカウンセラーが見たコロナ禍の現場

西川正志 (2022年1月4日付 東京新聞朝刊)
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コロナ禍が子どもたちに与えた影響について話す鳴瀬真巳子さん=東京都足立区で

 一斉休校や学校行事の縮小、中止などコロナ禍は教育現場に大きな変化をもたらした。感染防止のため多くの制限が加わった学校生活は、子どもたちにどんな影響を及ぼしたのか。約4万4500人が公立小中学校に通う東京都足立区で36人のスクールカウンセラー(SC)を統括する鳴瀬真巳子(まみこ)さん(38)に聞いた。

小学生は不登校、中学生は自傷行為が増加

-コロナ禍以前に比べ、教育現場にどんな変化があったか。

 運動会などの行事だけでなく、日常的な交流の機会が減った。例えば給食。4~5人の班で机をくっつけておしゃべりしながら食べていたが、今は前を向いたまま黙って食べる。コロナの影響とは一概には言えないが、不安定になったり、神経質になったりする場合もある。肌感覚だが、小学生は不登校、中学生は自傷行為が増えたように思う。

-原因は何か。

 環境変化への漠然とした不安の影響は大きいと思う。休校措置や分散登校後、学校に行きにくくなるケースもある。感染防止のため接触を回避することは大切だが、それが人との関わりを避けることの後ろ盾となってしまった側面もある。思春期の中学生は友人・親子関係や進路などさまざまなことに対する疑問や不満がたまりやすい時期。生活に制限がかかることで、そんな感情がより一層鬱積(うっせき)しやすいのかもしれない。

まずは子どもとの心の距離を縮めること

-不登校の子には、どう対応しているのか。

 小学生と中学生ではアプローチが違うが、私はまずは子どもとの心の距離を縮めることから始める。不登校の子がいる家庭に訪問して、トランプだけして帰る時もある。子どもの警戒心を解くことが重要だ。

-自傷行為をする子にはどう対応するのか。

 自傷行為といってもさまざまなケースがあり、単純ではない。子どもたちに表面的に「やめよう」と言っても、気持ちは変わりにくい。心配している気持ちを伝えて、引き金になったことなど背景をじっくり聞く。そして、他にストレスや困り事を解消できる方法がないか一緒に探していく。何でも話せて、一緒に考えてくれる相手だと分かってもらうことが大切だ。

感染防止対策で神経をすり減らす教職員

-教職員に変化はあるか。

 相当神経をすり減らしている。教職員の大変さをひしひしと感じる。感染防止対策という新たな責務が加わったことで校内の緊張感が増した。

-今後、SCとして心がけることは何か。

 子どものケアはもちろん、教職員とのコミュニケーションもこれまで以上に大切にしたい。子どもたちを元気にするためには、それを支える先生の力や存在がとても大きい。先生たちのストレスや負担を少しでも軽くできるよう、できることを探していきたい。

小中高生の38%が「登校したくない時ある」 

アンケート結果のグラフ 最近1週間、あなたは学校に行きたくないことがありましたか?

 国立成育医療研究センターが昨年11月に発表した「コロナ×こどもアンケート」第6回調査(インターネットで9月13~30日に実施)では、回答した全国1271人の小中高校生の38%が「学校に行きたくないことがある」と答えた。回答者が異なるため単純比較はできないが、一昨年9~10月に行われた第3回調査の31%より増えた。

 「時々」「たいてい」「いつも」を合わせ、小学校低学年の35%が「行きたくないことがある」と回答。高学年は37%、中学生は40%、高校生は47%と、学年が上がるにつれて増えている。

 担当者は「子どもたちの生活や心身への影響は、まだしばらく続く可能性が高いと考えられる。一人一人に寄り添うことが大切」と呼び掛ける。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年1月4日

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