韓国発の科学漫画「つかめ!理科ダマン」が大人気 ギャグ交えつつ本格的、家でできる実験がたっぷり

長田真由美 (2024年3月6日付 中日新聞朝刊)
 韓国発の科学漫画「つかめ!理科ダマン」(全5巻、マガジンハウス)が子どもたちに大人気だ。日韓で累計180万部を突破。ギャグを交えながら、本格的な科学が学べることが人気の秘密のようだ。作者の一人、ナ・スンフンさん(36)に作品への思いを聞いた。
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「つかめ!理科ダマン」の1巻に掲載されている「消えたコイン」©マガジンハウス

硬貨を置いた瓶 両手で覆うと…!

 冷たい瓶の口の上に500円玉を置いて、両手で瓶を覆ってみると…。ガタガタガタガタッ! 載せた硬貨が動いた。「つかめ!理科ダマン」の一こまだ。

 瓶の中の空気が体温によって温められて、空気の体積が増える。空気は狭い瓶の外に出ようとして硬貨を押し上げるというわけだ。空気は温度が上がると体積が増えて、温度が下がると体積が減るという科学の原理を応用している。

「入試」になると興味が薄れていく

 漫画は、作家のシン・テフンさんと漫画家のナさんのコンビで手がける。ストーリー仕立てで展開していて、笑いながら学べる。もともとは高校生を対象に、2009年から日常の一こまをウェブで連載。日本でいう「ちびまる子ちゃん」のような存在で、低年齢層から人気を集めた。そこで、小学生までの子どもたちを対象に、科学をテーマにした漫画を出版することになった。

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「つかめ!理科ダマン」作者の一人、ナ・スンフンさん=東京都中央区のマガジンハウスで

 理科の教科書を執筆する小学校教師に監修に入ってもらい、小学校で学ぶ科学を網羅した内容にしようと、検討を重ねる。「子どもたちは、小さいころから科学に対する好奇心が強い」とナさん。それが、中学生、高校生となるうちに、入試や成績のための「科学」となり、興味が薄れてしまうのでは、と考える。

「おならはどうしてくさいの?」

 意識するのは、家庭でできる実験を取り入れること。例えば、「ろうそくの火にかざすと文字が現れる秘密の手紙」では、酢やレモン汁を使って文字を書く方法を紹介した。

 「寒い日はなぜトイレが近くなるの?」「おならはどうしてくさいの?」など、子どもが好きそうな疑問やギャグも交え、解説する。1巻ごとにテーマを持って展開。これまで人体や宇宙の不思議、恐竜などに焦点を当てた。

「科学の面白さは国を超える」

 巻末には科学者の紹介や、科学クイズも掲載。「人の眉毛は、汗や雨が目に入らないようにしたり、強い日差しを防いだりします。人の印象にも影響を与えますが、自分の眉毛がどんな形か描いてみよう」など、楽しい質問もある。

 ナさんは「日本でも韓国のユーモアが伝わって驚いた。翻訳のおかげでもあり、科学の面白さは国を超える」と力を込める。

 「つかめ!理科ダマン」は、今も韓国で連載中。日本でも4月に、6巻が発売される予定。身近なものの不思議や楽しい実験を紹介する。

日本の子ども 理科への関心は年齢とともに低下

 日本の子どもたちにとって、科学はどんな存在なのか。国際的な学力調査によると、児童生徒の理科の学力は、他国と比較しても高い水準を保っている。その一方、年齢が上がるにつれて、関心が低くなっていく点が課題だ。

グラフ 国際調査における日本の平均得点の推移

学力は高いが「職業に…」は平均以下

 児童生徒の算数・数学、理科の教育到達度を国際的な尺度で測る「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の2019年調査には小学校で58カ国・地域、中学校では39カ国・地域が参加。日本は、小学4年理科で4位、中学2年理科では3位だった。

 学習意欲の調査では、「理科の勉強は楽しい」と答えた日本の小学生は92%と、国際平均の86%を上回った。一方、中学生では、「理科を勉強すると、日常生活に役立つ」が65%(国際平均84%)、「理科を使うことが含まれる職業につきたい」が27%(国債平均57%)と平均を下回った。

 こうした結果を踏まえ、文部科学省は、理数教育の充実を目指している。「自然の現象に進んで関わる」「見通しを持って観察」「実験などを行う」「結果を分析して解釈する」など、科学的に探究する学習に取り組むよう呼びかけている。

元記事:中日新聞 CHUNICHI Web 2024年3月7日

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