都知事選で考えたい東京一極集中「富裕層しか住めない街に…」 子育て支援の充実で周辺地域との格差が拡大

大野暢子 (2024年6月26日付 東京新聞朝刊に加筆)
 東京には多くの企業や大学が集まり、仕事や充実した教育を求めて地方から人が流れ込む。新型コロナ禍を機に30~40代には近郊に移る傾向がみられるものの、2023年は7万人近い転入超過となった。東京都知事選(7月7日投開票)では、各候補が0.99という衝撃的な合計特殊出生率を上向けるべく、子育て支援策などを競い合うが、それが東京一極集中に拍車をかける矛盾もはらむ。
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都内での子育てについて語る女性(右)=東京都内で

私学に誘導される…受験の低年齢化

 「給付は根本的な解決にはならない」。東京都内で2児を育てる30代の女性会社員は打ち明ける。18歳までの子に年6万円支給する都の「018サポート」など支援の手厚さを実感するが、高い住宅費や物価への不安は尽きない。

 コロナ禍で夫の収入が激減し、夫の実家がある香川県への移住を検討したが、夫婦の職歴を生かせる仕事は見つからなかった。「それに、一度地方に引っ込んでしまったら、次に東京で職探しをしようとしたときに不利になる気がして移住に踏み切れなかった」と今も都内にとどまる。

 女性は「仕事を含めあらゆるものが東京に集まり過ぎている。このまま一極集中が進めば、富裕層しか暮らせない街になる」と心配する。子どもの教育面でも、「お金があってもなくても私学に誘導される雰囲気があり、受験の低年齢化が進んでいる」と不安を感じている。 

医療費無償化 23区は独自の施策も

 新宿区で1歳から高校生までの4人の子の育児に追われる母親は「居住する自治体の子育て支援は、親にとって死活問題だ」と訴える。都は医療費無償化の対象を高校生までに引き上げ、23区などは独自に所得制限や自己負担を撤廃。このため、年に5万円ほどかかっていた長男の医療費負担がなくなった。

 子育て中の友人との間でも「子どもの医療費が無償でない地域は転居先の候補から外す」と話題になったばかり。「東京は意外と緑が豊かで暮らしやすい。専門学校の多さや都のフリースクール助成をみると、普通の学校以外の多様な選択肢があるのもいいと思った」と評価する一方で、「支援に地域差があるのはおかしい」との疑問も頭をよぎる。

図表 財政指標や流入人口で他道府県を圧倒する東京都/埼玉、千葉、神奈川の県知事が「格差」の例として挙げた都の施策

周辺自治体は危機感 国に是正要望

 これらの支援策は、東京へさらに人を呼び込むことにもつながり、地方は複雑な思いを持つ。民間組織「人口戦略会議」が4月に発表した分析によると、人口増を他地域からの流入に依存し、出生率が非常に低い「ブラックホール型自治体」は全国で25自治体が該当。17を都内が占めた。4人の子を育てる女性も中部地方出身で、ブラックホール型自治体に住む。

 42万を超える企業が集中し、約1400万人が暮らす首都・東京。6兆円超の税が納められ、再分配される。潤沢な財政で実現した所得制限なしの高校授業料無償化もその一例だが、近隣の県は危機感を強める。

 高校無償化に所得制限を設けている埼玉、千葉、神奈川の3県の知事は5月、都と周辺地域で子育て支援の格差が拡大しているとして、国の責任と財源で是正するよう政府に要望した。都と地方の格差が深まる中、都への一極集中を根本的に是正する妙案は見いだせていない。

「都民さえ良ければ」が招く都民の苦境

◇早稲田大の小原隆治教授(地方自治)の話 

 東京都は法人事業税などの税収に恵まれていることに加え、特別区の一部税収を都税として集めている。そんな都が各種支援で所得制限を撤廃すれば、富裕層や教育熱心な層の流入を招く。他自治体の税収や活力がそがれ、国全体では経済停滞や社会不安など負の効果が生じる。教育無償化などは国が全国統一で実施するべきだ。

 一極集中が進めば都民も過度な競争や生活コストの高騰、災害への脆弱(ぜいじゃく)性に直面する。都民さえ良ければいいとの発想に立つ都政運営は結局、都民のためにならない。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年6月26日

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  • 一都民 says:

    私は彼女には投票しなかった。他の記事で取り上げられているカウンセラーの雇い止め問題や外苑伐採問題、コロナ禍におけるオリンピックの強行開催、「三密」等適当なフレーズを反復して誤魔化す姿勢、そして「東京が潤えばそれで良い」という傲慢な態度。

    他に適当な候補が居なかったが、正直彼女だけは都知事にしたくなかった。

    東京を軽くして欲しい。国の省庁の多くを都外に動かすことで、国の役人は地方を知る良い機会になる。また人の数を減らし、機能が重複している箱物を減らすことで危険の分散にも繋がる。

    口先だけの「災害に強い首都造り」が本当の意味を持ってくる。首都を預かる者は日本全体を考えられる人でなければならない。

    一都民
  • キリモミシュート says:

    小池百合子知事には、初の女性総理大臣を目指して、知事は辞任して国政に復帰して欲しい。

    キリモミシュート 男性 60代
  • みっく says:

    都知事は東京さえ良ければという狭い考えでなく、又、自分の票の人気取りのためだけの政策をやめて、もっと日本全体のことも視野に入れてもらいたい。それぞれの地方で祖父母の援助をうけて子育てできれば子供の数を増やすことも可能な場合もある。地方との共生を目指すべき。教育については特に財政にものを言わせた差をつけるべきではなく、できる限り平等であって欲しいです。

    みっく 女性 60代
  • まぐ says:

    この記事はまさに今、都知事選で石丸伸二候補が訴えている内容と同じだったので私にとっては理解しやすかった。都の中で格差があり、日本の中で住むところにより大きな格差があることを今回石丸伸二さんの都知事選の演説や動画で知った。興味関心を持ってネットなどで情報を拾いにいくが、知らないことばかりだった。知れて考えることができて良かったと思う。

    まぐ 女性 50代

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