読書の秋 親子でドキドキしませんか? 作家・音楽家 小島敬太さんオススメ児童文学12冊 「耳を澄ます」と…
己の頭の固さに気付かされる
「雪だるまの雪子ちゃん」(江國香織著、偕成社)は、大人がハッとさせられる一冊。主人公の雪子ちゃんは、空から降ってきた「野生の雪だるまの女の子」。とにかく擬音語が自由奔放。主人公の無垢(むく)な明るさとあいまって、既成概念にとらわれがちな己に気付かされる。
中国で大人気の「紫禁城の秘密のともだち」(常怡著、偕成社)も、主人公の柔軟さが魅力。紫禁城で、竜や鳳凰(ほうおう)などの神獣の声を聞く。未知の存在と仲良くなる姿勢を見習いたくなる。
魂は種族を超えて結びつく
気持ちが通じるのは人間だけではない。「狐笛のかなた」(上橋菜穂子著、新潮文庫)は、「狐と人間」という種族を超えた魂の結びつきを描く。短編童話集「風と木の歌」(安房直子著、偕成社文庫)所収の一編「鳥」も、人間とは異なる不思議な恋の物語だ。
時間を超えて人は結びつくことができると教えてくれるのは、英国の名作「トムは真夜中の庭で」(フィリパ・ピアス著、岩波少年文庫)。死さえも、心のつながりを消せはしない。「わたしのバイソン」(ガヤ・ヴィズニウスキ著、偕成社)は、別れの受容の仕方を教えてくれると評判を呼んだ。毎冬を共に過ごし、静かな友情を育んだ少女とバイソン。バイソンが姿を消したある日、心の中にバイソンの声が響いてくる。欧州で四つの絵本賞に輝いた。
続いて、今も絶えない戦火を止めるヒントをくれるのは「土のふえ」(今西祐行作/沢田としき絵、岩崎書店)。戦争中、ある兵士の吹いた笛の音がお互いの心に響き、国同士の仲直りのきっかけとなる。
作者は人を泣かせる天才
真面目な話が続いたところでひと休み。変だけど読み終わるといい気持ちになるのが、「ものいうほね」(ウィリアム・スタイグ作絵、評論社)。主人公は女の子の豚、パール。森で拾った「話をする骨」と力を合わせて危機を脱する。パールの表情がなんともユーモラスだ。時計の音が謎解きのカギとなるドイツの「小さいおばけ」(オトフリート・プロイスラー著、徳間書店)も、おばけのかわいさに魅了される。
作者は思わず人を泣かせる天才。「あのひの音だよ おばあちゃん」(佐野洋子作画、フレーベル館)は、「凡人の幸福」が良いとしみじみ思わせてくれるとともに、「天才の孤独」に気付かされる。
秋の虫コオロギの怪異小説
秋の虫といえば、コオロギ。中国の清代前期の短編集「聊斎志異(りょうさいしい)」(蒲松齢(ほしょうれい)著、岩波少年文庫)所収の「こおろぎになった少年」は、怪異小説の傑作の名に恥じない味わいだ。
最後に英国の短編集「月曜日に来たふしぎな子」(ジェイムズ・リーブズ著、岩波少年文庫)から、「おばあさんと四つの音」を。貧しいおばあさんの住む小さな家はドアがギーギー、床はキュッキュッ、窓はゴトゴト、夜はネズミがうるさい。でもおばあさんにとっては騒音ではなく、落ち着く音。不要とみなしたものを排除する現代社会と対照的な豊かさを実感できる。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい