春はPTA 非効率的だけど、メリットも〈瀧波ユカリ しあわせ最前線〉12

瀧波ユカリ しあわせ最前線

「私、いなくてよくない?」が頻繁に発生

 今年もこの時期がやってきた。やっとひと仕事終えた者、お願いの電話がかかってこないよう祈る者、入学前の情報収集に努める者。そう、春はPTA。やうやうつらくなりゆく瀬戸際、すこし迷って、「あと1回だけお願い」の言葉に心うっかりなびきたる。

 正直、PTAの話はものすごく書きづらい。手練(てだ)れの物書きも逃げ出すレベルだ。なぜなら、小中学生の子を持つ親、特に母親の多くの悩みの種であり、それでいて実態はそれぞれに異なり、そして一種の「内部事情」であることから、「そう思う」「そう思わない」「語ってほしくない」というハレーションが起きやすいからだ。そのあたり気をつけつつ、筆を進めてみようと思う。

PTAについてのイラスト

イラスト・瀧波ユカリ

 私自身、子どもが小学生の時にPTAの委員活動を幾度となく経験してきた。その時に大変だったり違和感があったのはこういったことだ。家で1人でやれば1日で終わる作業も、わざわざ学校に集まってみんなで分け合わなければならない。その分け合う仕事量が少なすぎて、手持ち無沙汰に立ち尽くすことがよくある。なんとか都合をつけて参加した会議が、メールでも十分な伝達をするだけ。学校のネット環境が貧弱で、簡単なタスクに時間がかかりすぎる…などなど。

 つまり「非効率的だ!」と「私、いなくてよくない?」が頻繁に発生するのだ。継承されてきたやり方と、忙しい現代の親との相性がすこぶる悪い。そんなフラストレーションを抱えつつ、うまく輪に入れなかったりもするとメンタルへのダメージが半端ない。

親の「目」と「つながり」が失われたら

 一方で、理解できたこともあった。保護者が頻繁に学校を訪れること自体が「目」として機能することだ。親の目は、通学路や学校内での問題点を拾い上げることができる。また、話しながらでもできる簡単な作業は、親同士のゆるい「つながり」を作る機会となっている。しかし、この2つのメリットは見えにくい。

 最近複数の人から聞いた実例が、軽作業を廃止した話だ。改革派を自称する新参の男性が、効率化の名の下にカットしてしまったと。企業的な感覚で考えれば、それは正しいだろう。だけど、親の「目」と「つながり」がコミュニティーから失われるのは、大きな損失ではないだろうか。

 なければないほうが気楽! でも、あの面倒なやり方で守られているものも確かにある! このジレンマに揺れるのが親の宿命かもしれない。そんなことを思いながら、来年度の委員に久々に立候補してみた。やってみるぞ!

【前回はこちら】悩ましいお弁当 わが家の到達点は

【PTAについて、もっと読みたい方は…PTAの記事一覧

写真

瀧波ユカリさん(木口慎子撮影)

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)

 漫画家、エッセイスト。1980年、北海道生まれ。漫画の代表作に「私たちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~」「モトカレマニア」「臨死!! 江古田ちゃん」など。母親の余命宣告からみとりまでを描いた「ありがとうって言えたなら」も話題に。本連載「しあわせ最前線」では、自身の子育て体験や家事分担など家族との日々で感じたことをイラストとエッセーでつづります。夫と中学生の娘と3人暮らし。

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なるほど!

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グッときた

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もやもや...

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もっと
知りたい

すくすくボイス

  • チャメ says:

    主婦だったからできたPTA

    与えられたことをやるだけの母親会で、モヤモヤ全開の会だった。でも、学校内や教師の実態を垣間見た。

    働く親と主婦のPTAの断絶を感じた。
    主婦専業が少なくなった現在、いつ会議をもつか?難題。

    チャメ 女性 70代以上
  • あきら says:

    メリットデメリットがあるのは当然。まずはPTAという団体が入退会自由であり、無駄なく差別なくやりたい人が意義を感じてやっていれば、あっても無くても良いのです。

    昨今のPTAは学校の監視なんて役割より保護者同士の同調圧力や利権などの別の方向に向いている事が多いのです。だから問題になり、話題にもなりやすく炎上もしやすい。

    腫れ物に触るような団体にしたのは、保護者のリテラシーが低く卒業したら関係なくなるからでしょう。

    やったら楽しかった、だからあなたもやりなさい。他人の気持ちを勝手に決める人の多い事。特に学校という閉鎖的な空間では同調圧力が生まれやすいのです。

    だからこそお気持ちで語る事は危険なのです。

    あきら 男性 40代

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