絵本と農業の共通点は? 伊勢原市で「絵本と自然力畑の学校」を開催 じっと待って、その子が育つ力を信じる
絵本を読んだ後は待って
内田さんは各地の講演で子育てにおける絵本の有用性を論じ、絵本を読んだ後に子どもの反応をじっと待つ「待ちよみ」を提唱している。子どもの感受性に気付き、「自ら育つ力」を信じれば、子育ての幸せを実感できると説く。
読み聞かせのボランティア経験があり、講演を聴いた横田さんは「自分の農業と同じだ」と共感した。農薬や化学肥料を使わず「自然の力で育つのを待つ」というスタイルで食用バラや野菜を育て、有名レストランなどに納めている。
意気投合した2人は2020年春、絵本を並べた農園「きいろいおうちfarm」を平塚市に開いた。親子で自然を描いた絵本を読み、土に触れ、虫を探す空間に仕立てた。芋掘りなどの体験イベントを重ねる中、「単に珍しい観光農園ではなく、本当に子育てに役立つことをしたい」と考え、発案したのが、1年かけて種まきから販売まで行う本格的な農業体験プログラム。今年で4年目になる。
4月から毎月1回、20組の家族が2日に分かれて集まる。各回ともまず内田さんが選んだ絵本を横田さんが読み、農業につながる知識を解説する。横田さんは今年、国立青少年教育振興機構が認定する「絵本専門士」にもなっている。
絵本のテーマは天気や野菜、仕事、商売など多様。「どんなテーマでも分かりやすいのが絵本の良さ」と内田さん。ある月は「進化論」を唱えたダーウィンの「種の起源」を平易に説いた絵本を使った。
子が変わり、親も変わる
畑に移動すると、横田さんが作業の目標を説明し、家族で子どもの年齢に応じた進め方を決める。「親はやることをきちんと説明したら、途中であれこれ言わない」のが原則。最初は指示が多く、手出ししてしまう親も回を重ねると待てるようになるという。内田さんは「親子が一緒に作業することは意外にない。子どもはできるというのを目の当たりにして、それが積み重なって(親が)変わる」と話す。
社会課題が身近になり、親子の会話になる。天気が気になって猛暑など異常気象に関心が向く。野菜を育てる苦労を知って価格について考える。作業に「はまる」のは、特に父親だという。横田さんは「無口だったお父さんが僕に質問し、子どもと話しながら作業するようになる」と笑う。
2人の子どもと参加している横浜市の男性は「ふだん、つい先回りして言ってしまうことがあるけど、ここに来るとリセットされる」。妻も「子どもの言うことを聞き、待つことの大切さに気付いた。子どもの能力ってすごい。救われた」と語る。内田さんは「1年かけて真剣にやるから、いろいろな変化が生まれる」と確信を込めて話した。
プログラムの様子は「きいろいおうちfarm」のインスタグラムで紹介している。
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