子どもの急病…受診か様子見か救急車か コロナが心配な今、判断の目安は?
生後3カ月未満の子の高熱は速やかに受診を
あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)の救急科医長、伊藤友弥さん(41)によると「病気でもけがでも注意したいのは全身状態」だ。体温や脈拍、呼吸、意識などがしっかりしていれば、基本的に様子を見ていい。通常の呼吸や脈拍の速さ、顔色などを日頃から観察しておくと、元気な時との比較ができ、あわてずに済む。
発熱や嘔吐があると驚くが、動いたりしゃべったりして口から水分が取れれば、ほとんどの場合は安静にするうちに治まる。元気がないと感じても呼びかけや軽く肩をたたいて反応するなら、夜間や休日に無理に救急を受診する必要はない。かかりつけ医に相談するのが適切だ。例外は、生後3カ月未満の子が38度以上の高い熱を出した場合。この時期は母親からもらった免疫が残っており、本来、発熱自体が少ない。重い細菌感染症などの可能性があるため、速やかに受診したい。
感染リスクも考慮
感染が拡大する新型コロナウイルスも、基本的な対処法は同じ。国は感染を疑う基準を「37.5度以上が4日間続く」としてきたが、子どもは単なる風邪でもこうした症状が出やすい。治療薬がない今、受診すれば感染が心配だ。そのため、日本小児科学会は、肩で息をしている、唇や顔の色が悪い、呼吸の数が多い-など肺炎を疑う場合を除き、受診を勧めていない。
ただ、38度以上が5日以上続く場合は子ども特有の川崎病などを疑う必要があるので注意。不安な時は、同学会がインターネット上に設けている症状別のチェック表を使ったり、小児科医らが応じる小児救急電話相談「#8000」に相談したりすると目安になる。
外出自粛、室内のけがにも注意を
外出自粛で家庭で過ごす時間が長くなる中、気を付けたいのが室内でのけが。同センターには、休日、平日の区別なく、「食事の準備中にやけどをした」「かくれんぼの最中にぶつけた」などの受診例が相次いでいる。消費者庁が公開している「子どもの事故防止ハンドブック」も参考に、子どもの発達に対応した予防策を講じておきたい。
新型コロナで医療現場は逼迫(ひっぱく)しているが、伊藤さんは「緊急性が明らかなら、ためらわずに受診を」と強調。ただ「熱が出たらすぐ病院、と考えていた人は、この機会に適切な受診のタイミングを考えてみて」と呼びかける。
保護者向け「12項目・5段階」の問診票 日本小児救急医学会が5月中旬に公開予定
日本小児救急医学会(東京)は、受診の判断の目安として保護者向けの問診票を作成。5月中旬に、詳しい解説も付けて学会のウェブサイトで公開する。
問診票は、顔つきや会話の反応など全身状態を見るための12項目。項目ごとに4~5つの選択肢があり、子どもの状態を見てチェックする。例えば、呼吸状態は次の5段階。
[1]普通に呼吸
[2]いつもより速い
[3]ゼイゼイ、ヒューヒュー
[4]鼻がピクピクし肋骨(ろっこつ)の間がへこむ
[5]あえぎながら呼吸
数字が大きいほど緊急性が高く、12項目で確認し「[5]が1つでもあれば救急車を呼ぶ」といった基準がある。間隔をあけて繰り返し評価することで急変の見落としも防止。2回目以降も「[3]以上が1つでも増えたらすぐ受診、2つ以上増えたら救急車」などと分かりやすい。
学会は今後、乳児健診の際に配るよう各自治体に働き掛ける。理事長の長村敏生さん(63)=京都第二赤十字病院副院長=は「継続して観察することが大事。かなり正確に把握できるのでぜひ使って」と話す。
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