教育移住と自分のキャリア「どちらも諦めない」 30代女性が東京を離れて転職する道を選ぶまで

中沢佳子
 子どものためにより良い教育環境を求めて地方移住を考える際にハードルとなるのが、仕事の継続だ。子どもの環境と自らのキャリアを諦めなかった、ある女性の決断を追った。
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教育移住を実現するため、柔軟な働き方を求めて転職を選んだ経験を語る窪田美波さん

「母親」のラベルをはられる転職活動

 山梨県で夫(43)、長女(9)、長男(5)と暮らす会社員窪田美波さん(39)は3年前、小学校入学を控えた長女のために東京からの移住と自身の転職を同時に決めた。いつか住みたいと夢見た山梨に、自然に囲まれてのびのび学べる私立校を見つけたためだ。長女も気に入り、夫も賛同。長男の保育園が気がかりだったが、移住に向けて踏み出した。

 しかし、勤め先はフルリモート勤務を認めなかった。東京でキャリアを積みながら移住するには、転職しかないと決断した。

 転職活動では、企業から「母親」のラベルをはられる現実に戸惑った。面接では、前職だった福利厚生の仕事の経験より、時短勤務や出張の可否など条件面が主な話題に。「配慮はありがたいけれど、外堀の話ばかり」と違和感があった。

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(写真はイメージ)

原点は、高校時代に暮らしたフィンランド

 やがて価値観や経験を丁寧に聞く転職支援会社の担当者に出会い、福利厚生サービスを手がける企業を紹介された。創業間もないがリモートワークを推進する会社だ。「立ち上げ期で面白い。経験も生かせる」と転職を決めた。

 今は在宅勤務を軸に、都内のオフィスや取引先に月数回向かう。夫も週3回程度東京に出向く働き方にし、夫婦で「出勤」が重ならないよう調整。子どもたちは生き生き暮らし、成長を見守る時間も増えた。

 窪田さんの決断の原点は、高校時代に暮らしたフィンランドで男女が自分らしく生き、働き続ける姿を知ったこと。新卒時の就職活動でも、結婚や育児でキャリアを中断せずに働ける職場を求めた。それでも、育休中に昇格が止まって後輩に先を越され、母親がキャリアを積む難しさを実感したこともある。子育て環境もキャリアの継続も諦めなかった窪田さんは言う。「今後、子どもの進路によっては東京に戻るかもしれない。その時に家族にとっていい道を柔軟に選びたい」

グラフ 働く女性の「M字カーブ」はいまだ残る ※2025年の年齢層別終了率、総務省調査

育児のために仕事を調整するのは女性

 子育て世代の地方移住への関心は高い。妊娠・育児関連アプリを手がけるカラダノート(東京)の調査では、42.0%が関心があると回答。すでに移住した人を含めると、半数近い。主な理由は「子どもの教育・自然の豊かさなど生活環境」だ。

 だが、窪田さんのように、仕事の継続と育児の両立は簡単ではない。こども家庭庁によると、両立を巡る働き方の希望にも、男女差がある。正社員の親に、末子の誕生から小学校低学年までの各時期で望む働き方を尋ねた調査で、男性はどの時期も4~5割が「残業しない」「テレワーク」など柔軟な働き方を希望。女性は1歳までは6~7割が長期休業を望み、柔軟な勤務が半数を超えるのは小学校低学年期だ。子どもの成長に応じて仕事を調整するのは女性という意識が根強いことがうかがえる。

 その意識は就業状況にも表れる。総務省の調査で、2025年の女性就業率は35~39歳で落ち込み、出産や子育て期に低下する傾向は続く。

元記事:東京新聞デジタル 2026年3月6日

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