150人の障害児と150カ国の大使館を訪問 山田ベンツさん「日本を”心のバリアフリー”先進国に」
小児専門病院で出会った、病気と闘う子どもたち
きっかけは2011年に生まれた長男(9つ)に先天性の心臓疾患があったこと。入院先の小児専門病院の新生児集中治療室(NICU)に毎日面会に通い、さまざまな病気と闘う子どもの様子を目の当たりにする中で、障害について考えた。
「年を取れば誰もが若い頃のように歩けなくなったり、目が見えにくくなったり、耳が聞こえづらくなったりする。ままならない日が来ることを皆が少しでも実感できたら、障害者への態度も変わるのかな」
当たり前に一緒にいられたら、垣根はなくなる
自身はスウェーデン人の父と日本人の母から生まれたハーフ。学校などで「ガイジン」と言われたことはあるが、差別的な扱いを受けた記憶はない。「見た目は多少違っても、当たり前に一緒にいたから、周りも普通に受け入れていた」。その体験を今の社会の障害者との関わり方に重ねる。「身近にいないから違ったものとして捉える。知る機会を増やせたら、垣根はなくなるんじゃないか」
1997年から横浜市南区でカフェ・バー「むつかわバール トミーズカフェ」を経営。映像制作などを手掛ける有限会社「ボディーアンドブレイン」も運営しながら、障害児が社会で活躍できる機会を模索する中、東京五輪・パラリンピックの招致が決まった。
世界に物語を発信 コロナが落ち着いたら必ず
「世界中から東京に人が来るチャンスに合わせ、各国の全権を代表する大使館を訪ね、障害のある子どもたちの物語を世界に発信したい」。企画書を手に、各国大使館に飛び込みで交渉を重ね、スウェーデンのほかミャンマーやパナマ、オーストラリア、アフリカのマラウイなどの大使館訪問を実現してきた。
新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックは延期になり、大使館訪問もできない状態だが、「状況が落ち着いたら必ず再開する」と揺るがない。今後も新たな訪問先を開拓しながら活動を続ける。「社会全体を成熟させ、日本を心のバリアフリーの先進国にしたい」
2020ジャパンバリアフリープロジェクト
東京五輪・パラリンピックに合わせ、障害のある150人の子どもたちと家族が150カ国の大使館を訪問しようと始まった。2024年の達成が目標。事前にそれぞれの歩みを動画で撮影し、訪問時に大使と見ながら交流する。パラリンピック種目のボッチャを一緒に楽しむこともある。動画をまとめたドキュメンタリー映画も制作予定。
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