後ろめたい「スマホ育児」リスクと注意点 親子間ルールの決め方は? YouTubeは自動再生をオフに

長田真由美 (2021年10月22日付 東京新聞朝刊)
 ちょっとだけ静かにしてほしい-。人の目が気になる電車内や病院などで、やむなく子どもにスマートフォンを渡したことはないだろうか。動画を見せたり、ゲームをさせたりする「スマホ育児」に後ろめたさを感じる人は少なくない。一方で、スマホは今や日常生活に欠かせない道具だ。リスクを意識しながら、上手に利用するには。 
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スマホの動画画面を見る子ども

乳幼児に広がる「依存」 1歳児の1割

 「スマホを全く使わせないのは難しい」。岐阜市の女性会社員(36)は言う。昨春の一斉休校中、在宅勤務をしていた時のことだ。小学1年の娘に静かにしてもらおうとスマホを渡した。その結果、学校再開後も休日になると触りたがるように。今は「1日1時間」と決めているが、「これでいいのか」と悩んでいる。

 「乳幼児にまで『スマホ依存』が広がっているのは明らか」と東京女子大教授の橋元良明さん(66)は指摘する。橋元さんは2018年、インターネット上で、6歳以下の第1子を育てる母親約2300人に調査。それによると、スマホを触ったことがあるのは0歳児の3割、1歳児以降では6割を超えた。すぐにスマホを使いたがる、「やめようね」と言ってもやめない、取り上げると機嫌が悪くなる―など8項目のうち、5つ以上が当てはまる「依存傾向」の子も、1歳児の段階で約1割に上った。

グラフ 乳幼児の年齢別スマホ依存傾向者率

 スマホが乳幼児の心身や脳にどんな影響を与えるかは実証的な研究例がなく、「分からない」のが現状。ただ、一般的に「視力や読書量の低下、目と目を合わせる意思疎通が減ることによる共感力の不足など、さまざまな懸念が指摘されている」と橋元さんは話す。

取り上げると泣く→「泣けば使える」

 とはいえ、小中学校にもタブレット端末が導入されている今、スマホなどデジタル機器を使わない生活は現実的でない。だからこそ「『利用は電車内や病院だけ』『できるだけ短時間で』などとルールを決め、依存を避けて上手に取り入れることが大事」と話す。ルールを作ったら守ることも必要だ。「取り上げると泣くから」と折れる親もいるが、それだと「泣けば使える」と思ってしまう。毅然(きぜん)とした態度を心掛けたい。

 区切りをつける手だてとして、成蹊大客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんは、パズルやブロックといった別の遊びを用意する、「次は大好きな絵本を読もうね」などと声を掛けることを勧める。約束の5分前になったら音を鳴らして合図する、時間が来たら外に出るなど環境を変えるのも効果的という。

 動画投稿サイトYouTubeは、次々に別の動画が見られる自動再生の機能を切ることが大事。加えて、テレビの画面で再生できるよう設定すれば、親が家事や仕事など別のことをしていても、どんな動画を見ているかが把握できて安心だ。

初めて触れる時期はできるだけ遅く

 幼いうちの外遊びや読書は、脳の発達を促すことが分かっている。「スマホには一度触ると、また使いたくなる悪魔的魅力がある」と橋元さん。遊び=スマホにならないよう、「初めて触れる時期はできるだけ遅らせて、子どもの趣味の幅を広げて」と力を込める。

 依存のリスクを十分に理解した上で使わせれば、親も気持ちに余裕ができる。「また触らせてしまった」と罪悪感でいっぱいになるより、一定のルールの中で、親子のコミュニケーションをしっかり取りながら活用したい。

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