野球人口の減少食い止めたい 西武ライオンズと埼玉のアマチュア18団体が協議会設立

中里宏 (2022年4月22日付 東京新聞朝刊)

週末、薄暗くなるまで練習を続ける児童ら=さいたま市で(本文とは関係ありません)

5月1日に未経験の子ども向けイベント

 子どもの野球競技人口の減少に歯止めをかけようと、プロ野球・埼玉西武ライオンズを運営する西武ライオンズ(所沢市)と、埼玉県内のアマチュア野球18団体が3月、埼玉県野球協議会を設立した。協議会は「子どもに野球の楽しさを伝えること」を使命とし、5月1日にベルーナドーム(同)で開催する野球未経験の子ども向けイベントを皮切りに、共同で活動を展開していく。

用具の費用、長時間の練習が敬遠されて

 野球人口の減少は少子化のペースを大幅に上回り、プロ・アマ共通の危機感が初の協議会結成につながった。事務局を務める西武ライオンズ経営企画部の松本有(ゆう)さんは「2010年から2020年までの15歳未満人口の減少は10.2%ですが、ほぼ同時期の小学生の野球人口は約4割、中学軟式野球部は半分に減っているというデータがあります」と話す。

 急減の原因とされるのが「用具の初期費用が高い」「週末に長時間の練習・試合があり、保護者に敬遠される」「中学野球部の丸刈りが嫌がられる」などの事情だ。加えてボール遊び禁止の公園が多く「そもそも野球に触れる機会が減っている」という。

 特に減少が著しい中学校の軟式野球部。埼玉県中学校体育連盟軟式野球専門部の中田大輔専門委員長(58)は「私が教職に就いた頃は1学年20人が普通だったが、今は1チーム9人がやっと。危機感は大きい」と言う。協議会の発足に「プロと高校、大学、硬式、軟式の競技団体が一堂に集まることは、いまだかつてなかった。子どもに野球の楽しさを伝えることを主眼に集まったことに大きな意義がある」と期待する。

肩や肘の健康診断、指導者講習も

 中田さんは2016年から、川口市立中の軟式野球部で「川口市野球人口増加プロジェクト」を実施。丸刈りの強制をやめ、小学校で安全なプラスチックのカラーバットと軟らかいカラーボールを使った三振なしのゲーム「サークルベースボール」の普及に努めている。

 プロジェクトの中心を担う同専門部事業部長の武田尚大(まさひろ)さん(39)によると、野球部がある市内25校の部員数は2017年(168人)、2018年(174人)、2019年(188人)、2020年(195人)と増加に転じた。コロナ禍の影響で2021年は162人だったが、未経験者の入部は25人と普及活動の効果が表れている。

埼玉県内の各野球連盟や大学野球部などが一堂に会した埼玉県野球協議会の設立総会=所沢市で(埼玉県野球協議会提供)

 武田さんは「われわれの活動だけでは限界があり、何とか西武ライオンズとつながりを持ちたかった。ライオンズが音頭を取ってくれなければ協議会はできなかった。良い連携をつくっていきたい」と話す。

 ライオンズの松本さんは「けがが原因で小学校高学年で野球をやめてしまう子も多い。子どもを対象にした肩、肘の健康診断を実施するほか、指導者向けの講習も考えている」という。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年4月22日

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