緑色の野菜を嫌がる1歳の娘 無理やり食べさせるべき?〈宮里暁美の子育て相談〉

(2024年3月19日付 東京新聞朝刊)

宮里暁美の子育て相談

食事嫌いになっては困る

 子どもと食事する際、緑色の野菜を食べてもらいたいのに嫌がる時は、無理やりにでも食べさせてよいのでしょうか。食事嫌いになってしまっても困ります。(1歳女児、30代母親)

野菜を食べたくなさそうな子どものイラスト

イラスト・永須華枝

大人が「おいしいね」と食べる姿を見せて

 緑色の野菜と聞いて「ポパイ」のホウレンソウを思い出すのは、どの世代の方まででしょうか。私は「ポパイ・ザ・セーラーマン」の歌とともに映像が蘇(よみがえ)ります。ホウレンソウを食べると超人的パワーを出す小柄なポパイと恋人オリーブ、天敵の大男ブルートが繰り広げる大騒動をよく見ていました。ホウレンソウを食べた途端に元気もりもり!という展開に息を呑みながら。

 「ホウレンソウ」は緑色の野菜の代表選手です。同時に子どもたちに嫌われがちな野菜でもあります。同じくピーマンも色の鮮やかさや味わいが影響しているのか嫌われがち。だからでしょうか、「ピーマンマン」となり、活躍するお話ができています。

 こうして振り返ると、「緑色の野菜」は漫画に登場したりヒーローになるという努力が必要なもののようです。努力によってイメージアップを図ったり、調理方法を工夫しながら、子どもたちの食べてみようという気持ちを盛り上げていく。そのような営みが延々と重ねられてきたかと思うと少し気持ちが楽になりませんか

 「離乳食ではなんでもパクパク食べていたのに1歳になったら食べなくなって」「調理方法を失敗したのでしょうか」-。こう嘆くお母さんと「お母さんのせいではなくて、お子さん自身の味覚の発達によって、食べたり食べなかったりしているのかもしれないですよ」と語り合ったことがあります。「食べない」という状態と向き合う辛(つら)さに共感しつつ、「食べる」はその子自身のことという原則を忘れないようにと思いました。

 ご相談には「無理やりにでも食べさせてよいのでしょうか」とありましたがこれは絶対にやめましょう。「食べる」とは異物を体内に取り込む行為。それを無理強いさせられたらどれほどの苦しみでしょうか。食事嫌いを超えて人間嫌いになる可能性もあります。

 それよりもそばにいる大人が「おいしいね」とたくさん野菜を食べてください。お子さんは、なんだかおいしそう、食べてみようかなという気持ちになるかもしれません。しかも大人も健康な食事になります。まさに一挙両得。大人たちがおいしく食べる暮らしを続けていれば、いつか必ずいろいろなものを食べる子どもに育ちます。楽しみにしていてください。

 (文京区立お茶の水女子大学こども園・前園長、お茶の水女子大学特任教授)

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