入院中に笑顔をくれる小さな友だち「ファシリティドッグ」 都立小児総合医療センターで国内初の2頭目を 3月14日までクラファン

五十住和樹 (2025年2月12日付 東京新聞朝刊)
手術室に向かう前に、ベッドの上の女児に寄り添うファシリティドッグのアイビー

手術室に向かう前に、ベッドの上の女児に寄り添うファシリティドッグのアイビー(認定NPO法人シャイン・オン・キッズ提供)

 闘病する子どもたちに寄り添うため、専門的に育成された犬「ファシリティドッグ」。国内ではまだ、その数は少ない。2019年に導入した東京都立小児総合医療センター(府中市)は、国内初となる2頭体制にするためのクラウドファンディングを始めた。現在は主に小児がんなど長期入院の子どもを対象にしているが、2頭目は発達障害などの診療を行う児童・思春期精神科で活動する予定だ。

「長期入院の子の心の安定や成長に」

 昨年11月、小さな頃から入退院を繰り返している心臓病の女児(6)が、ストレッチャーで手術室に向かった。横にはファシリティドッグのアイビー(ラブラドルレトリバーの雌、8歳)。約15分間、手術室の手前まで寄り添った。アイビーのパートナー役であるハンドラーで看護師の大橋真友子さん(46)によると、女児は術後に「楽しかった、うれしかった」と話し、否定的な言葉は口にしなかった。母親は「アイビーのおかげで、病院が嫌なものから(アイビーに)会える楽しみに変わった」と話したという。

 アイビーの仕事は手術室への同行のほか、添い寝や食事、薬が飲めない時、点滴・採血時、リハビリ時の支援など。導入から昨年末まで、7病棟と集中治療室(ICU)の患者441人を支えた。「目に見える治療効果を証明するのは難しいが、長期入院の子の心の安定や成長につながっている」と血液・腫瘍科の横川裕一医長(46)は言う。

院内をアイビーと歩く大橋真友子さん

院内をアイビーと歩く大橋真友子さん=東京都府中市の都立小児総合医療センターで

担当医「アイビーの効果を実感」

 ファシリティドッグは、院内での安全なコントロールを学んだハンドラーとペアで動く。小児医療に携わってきた大橋さんは認定NPO法人「シャイン・オン・キッズ」に所属。午前と午後の約1時間~1時間半、1人15分を目安に患者の元を訪れる。

 大橋さんは「入院中の子が笑顔になるのは家族にも医療者にもうれしい」と話す。3、4年前、女子中学生が手術当日に号泣して嫌がったため、「アイビーと散歩しよう」と一緒に手術室へ。麻酔時にもアイビーの姿が見えるようにドアを開けた。腫瘍の進行が早く手術を延期できる状況ではなかったといい、担当の外科医が「アイビーの効果を実感したよ」と話したのが忘れられないという。

 シャイン・オン・キッズのファシリティドッグは10年、静岡県立こども病院(静岡市)に最初に導入された。2012年には神奈川県立こども医療センター(横浜市)、2021年に国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)で活動を開始。同法人以外では2病院で活動している。

 感染対策や犬の健康管理に細心の注意を払うが、課題は年間約1000万円に及ぶ費用。クラウドファンディングは3月14日までで、既に「第1目標」の2000万円を上回り、「第2目標」の3055万円を目指す。集まった資金は2頭目の導入費のほか、ハンドラーの育成費用に充てる。詳細はクラウドファンディングサイト「READYFOR」で紹介している。

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  • かめこ says:

    この記事で初めて知りました。

    私の娘(4歳)は元気に過ごしていますが、生き物が大好きです。生き物がくれるパワーが、病気で戦う子どもたちの笑顔を運んでくれるのはありがたいですね。

    非力ながら支援させていただきました。

    かめこ 女性 40代

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