車両の中から、下から! こども記者が都バスの整備を取材【都営交通×東京すくすく 夏休みわくわくこどもキャンペーン】
1年に1度の健康診断
「ここは都バスの車検工場です。みんなも毎年、身体測定があるでしょう? バスも同じで、都内にある約1500両の車両すべてが、1年に1回はこの工場に来て健康診断を受けます」。工場長の宮城実さん(60)から簡単な施設の説明を受け、こども記者たちは早速、工場見学に出発します。
まず、水素で走る燃料電池バスに乗車し、中から車体洗浄の様子を見学しました。「車両の中からの見学は、職員でもあまり経験したことがないはずですよ」と宮城さん。子どもたちは、車体の前から後ろまで回転しながら往復するブラシの動きに合わせて車内を移動し、みるみるきれいになっていく窓を見て、「わあ~っ」と歓声を上げました。
江東区の小学3年、塩畑ひかりさんは、1回の洗浄に使う水の量について質問しました。「大体300リットル使うので、お風呂1.5回分と同じくらい。200リットル以下で洗える機械もあります」と教わり、「6000リットルくらい使うと思っていたのに、想像していたよりずっと少ないです」と驚いていました。
持ち上げたバスの下から
車内を観察したこども記者たちは、疑問に感じたことを宮城さんに次々に尋ねます。
江東区の小学3年、浅野朋輝さんは、車両中央の扉の近くにあるレバーを指して「『非常コック』って何ですか?」と質問。宮城さんは「ドアの開閉を手動でするためのものです。トラブルでドアが開かなくなった時に使います」と説明し、「運転手側の後方には、『非常ドア』もあります」とバスの右側後部を示しました。「非常ドアは、バスが横に倒れたときに開けられるよう、乗降口とは違う側に付いているんですよ」との解説に、子どもたちが深くうなずきます。
子どもたちは1人ずつ運転席に座って、レバーを引いて乗降扉を開閉したり、全部で11個付いているミラーを見て安全確認をしたりと、運転手気分も味わいました。江戸川区の小学6年、小川鏡真(きょうま)さんは、「バスの運転手になりたいと思っているので、運転席に座れてうれしい」と喜び、宮城さんに「頑張ってバスの免許を取ってもらわないといけないけれど、待ってるから一緒に働こう」と声をかけられていました。
車両整備の見学では、リフトで1.3メートルの高さに持ち上げた車両の下に入り、タイヤが動く仕組みやエンジンの位置を確認。車両から取り外したエンジンや床のベニヤ板の張り替えも間近で見ました。
「バスのゆかは木だ!」
取材後、1~3年生は取材の成果を絵日記に、4~6年生は壁新聞にまとめました。
港区の小学2年、小関優奈さんは「床は硬い金属だと思っていたので、軽いベニヤ板と知ってびっくりした」と振り返り、「バスのゆかは木だ!」という題を付けました。
今年1月に転校し、バスで20分かけて学校に通うようになったことがきっかけでバスへの関心が高まったという渋谷区の小学5年、三隅麻佑子さんは、一番伝えたいことを書く大きな見出しを何にしようか迷い、取材メモを見ながら、「全部の車両を1年に1回点検するのもすごいし、たった1日で点検を終えることにも驚いた」と内容を整理。「バスの健康診断」をテーマに壁新聞を作成しました。
取材のアドバイス役を終えて
「バスの中に階段があるのは、なぜですか?」
「バスの中に地下鉄の路線図が貼ってあるのは、どうしてですか?」
こども記者たちから出る質問は、いい質問ばかりでした。
当たり前だと思って疑問も持たなかったけれど、よく考えると大人も知らないこと。
注意深く観察していないと気付けないようなこと。
「そんな質問、よく思いつくなあ」「よく気付いたなあ」と、感心しっぱなしでした。そして、さらに驚いたのは、こども記者たちのどんな質問にも、工場長の宮城さんはじめ、工場の整備士さんたちが必ず分かりやすい答えを返してくださったこと。
「何を聞いても答えてくれる」「プロってすごいなあ」と感じているのが、子どもたちの表情から伝わってきました。
どうしてだろう、と疑問に思うこと。
少し勇気を出して、それを誰かに聞いてみること。
答えを聞いて驚いたり、納得したりすること。
もっと知りたくなること。
取材で必要な力は、生きていく上でも大きな力になると思います。
「こども記者」の取り組みを、これからも子どもたちと、働くみなさんと重ねていきたいです。