ライター ヨッピーさん 堅物のおやじは僕を医者にしたかった やんちゃしても大学に行けたのは中受のおかげ 

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父親との思い出を語るヨッピーさん(石橋克郎撮影)

家族のこと話そう 

受験の寸前で反抗期がやってきて 

 学校教師だったおやじは、鉄道とアニメが大好きな典型的なオタクです。物心つく頃からテレビで「宇宙戦艦ヤマト」が流れていました。お笑い番組が嫌いで、志村けんさんが出る番組は「頭が悪くなる」と見せてもらえませんでした。小学校で「だいじょうぶだぁ」がはやっていたのに、ついて行けなかった。

 おやじは友達も少なく、一人で電車に乗る時間が好き。今で言う「陰キャ」だったんじゃないかと思います。恐らく周りを見返してやりたくて、医者になりたかったようですが、色覚障害のせいで諦めたおやじは、僕に夢を託してたくさん勉強させました。

 中学受験のために小4から進学塾に行って、そのままいけばいい中学に入れそうだったんですが、受験の寸前で僕の反抗期がやってまいりまして。受験しろと怒るおやじに、「テストは全部白紙で出すからな」と言ったら折れて、無事に希望通り地元の公立中学に進むことになりました。

 そこから僕は大爆発。放課後のプールに忍び込んで、びしょぬれのパンツ一丁で三者面談を受けたり、授業中にばれないように隣のクラスにしれっと座るという遊びをしたり。運悪く、中2で隣の中学におやじが赴任してきてからは、僕の悪行が筒抜けで、「息子一人まともに育てられへんのに、よそさまの子どもなんか教えられるか」とよく怒られました。

 面倒なのが、ちょっと反発すると、おやじはすねるんですよ。「父親やる自信がない」と言って家出します。電車乗りに行ってたんちゃうかな。長期休みは、2、3日おやじの顔見てへんなと思ったら、電話があって「お父さん、今パリやで」みたいなこともよくありました。

遊び尽くしてネットの世界へ

 高校は友達が行くからと私立に進みましたが、部活も禁止のガリ勉軍団みたいなコースに入っちゃって。遊びたい盛りなので、夜中にこっそり部屋の窓から抜け出して、朝3時に帰っていました。学校で午前中はずっと寝て、お昼ご飯食べたら、図書室で夏目漱石や司馬遼太郎を借りてきて、授業中に読む生活を3年間やっていました。

 内申点は鬼のように悪くても、国語だけは偏差値70はありました。英語も単語は読めないけれど、長文になるとなんとなく言っていることは分かるという特殊能力がありました。あとは世界史をやればなんとかなるので、ヤマ勘でアメリカとヨーロッパ史だけ1カ月勉強したら、関西学院大でちょうどそこが出たんですよ。医学部に入れようと、小学5、6年で勉強漬けにされた遺産もあると思います。一応、西の名門と言われる大学に受かったのに、おやじは不満そうでしたね。

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0歳長女と3歳長男の父。育児はもう落ち着いてきたという

 大学を卒業して商社で働き、30歳で突然辞めて「インターネットの仕事をする」と言ったら絶句してましたね。具体的な仕事内容は言ってません。だって、渋谷でパンツをかぶってパンツを配るとかしていたので。いつ伝えようか悩んでいる時に、母校の講演に呼ばれたので両親にも来てもらい、これまでの仕事をカミングアウトしたら、堅物なおやじは最前列で机に突っ伏していました。

 上京してから会うことは減りましたが、結婚するとおやじは妻に懐きました。新しい電車に乗るからと、うちに2、3日泊まりに来ていました。3カ月に1回くらいかな。妻に「子どもはまだかな」なんて言うから、「言ったらあかんやつやん」と説教してましたね。

 4年ほど前におかんから「お父さんの様子がおかしい」と電話があって大阪に帰ると、独り言が多く「頭の中に小学生ぐらいの男の子がおる」と言うんです。夜中に突然怒りだすなど生活が回らなくなって、今は施設にいます。薬のせいか、長い会話ができなくなりました。孫を抱っこしても無表情。でも孫だと理解はしているようだし、送った写真はたくさん見ているそうなので、たくさん会わせてあげたいなと思っています。

落ち着いた子育てしています

 最近はせっせと育児しているのですが、「あなたがちゃんと育児すると思わなかった」と、妻や義母に驚かれました。3歳の長男は僕にそっくり。かつては僕もかわいかったんですよ。0歳の長女もめちゃめちゃかわいい。朝は僕が担当で、子どもたちを7時半に起こして支度をし、妻に「行ってきます」と言って、保育園に送ります。

 迎えは妻で、夕食の準備やお風呂は一緒にやります。宅食を頼んであるので、届いた食材をレシピ通りに作るだけ。最近は長男が僕の趣味の銭湯について来るようになり、週2で行っています。先日は水風呂で縮こまった僕のちんちんを見て「パパのちんちん、ちっちゃ!」と、その日一番の声で叫んでいました。僕もおやじをだいぶ困らせた子どもだったし、きっと因果応報なんでしょうね。

 子育ては一段落したかなと思っています。イライラして、声を荒らげちゃったっていうことはないですね。もともとテンションの上がり下がりがない性格です。最近は、何かあると立てこもる子どもの怒り方がかわいくて。「もうパパそんなこと言うなら、○君出てっちゃうよ」と言って洗面所に行って、5分くらい立てこもったら出てきて、「誰が悪いの」って聞くと「パパ」と言われ…。子どもにはなめられていると思いますが、今はそれでいいんです。

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自称ずぼらなヨッピーさんは、家事最適化で育児ストレスをなくそうと呼びかける

ヨッピー

1980年、大阪府生まれ、ライター。体当たりのリポートで面白系のネタから社会派の話題まで扱い、「最も数字を稼ぐ(読まれる)」ライターと呼ばれる。子育て中でもゆっくりお風呂に入ってもらおうと、託児銭湯を主宰。近著に「パパもママ必読!子育てがラクになるノウハウを集めた育児ハック」(KADOKAWA)

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