〈古泉智浩の里親映画の世界〉昨年の韓国映画ベストワン!心臓が口から出そうなサスペンス vol.28『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』

子育て世代がつながる

古泉智浩「里親映画の世界」

vol.28『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』(2020年/韓国/男/5歳?/保護)

採点表

 近年、韓国映画はすさまじくハイレベルでとうとう『パラサイト 半地下の家族』がアメリカのアカデミー賞作品賞を受賞するまでになっております。新年の節目ということで、僕が選ぶ2020年の韓国映画ベスト5を発表します。

  1. ブリング・ミー・ホーム 尋ね人
  2. PMC ザ・バンカー
  3. 悪人伝
  4. EXIT
  5. ムルゲ 王朝の怪物

 つまり今回紹介する『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』が僕個人2020年の韓国映画で第1位でした。ストーリーが抜群に面白くて、テーマが切実でそれに見合う演技も素晴らしく、サスペンスの演出がすごくて、本当に心臓が口から出るほどドキドキしました。

 看護師のジョンヨン(イ・ヨンエ)は、夫ミョングク(パク・ヘジュン)と共に、行方不明になった息子ユンスを6年間捜し続けています。チラシを作成して懸賞金を出して血眼になって捜しています。ユンスがいたという情報を受けて夫のミョングクが現地に向かう途中、交通事故に遭い亡くなってしまいます。その電話は心無いいたずら電話でした。こういった状況で物語が展開しますが、ネタバレが気になる人はここから先を絶対に読まないでください。東京では9月に公開されて、まだDVD発売や配信が始まっていないようなので、見てみたいと思う方は、ぜひDVDや配信かリバイバル上映などで本編をご覧いただいた後にまたお読みくださいね。僕は地元の映画館で12月に上映されていて見ることができました。

※編集部注※この先はネタバレ要素が含まれています!

 それまで当たり前のように一緒に暮らしていた子どもがある日突然いなくなるというのはどういうことでしょう。ジョンヨンはそれから何年も子どもに会えないまま過ごしています。とてもつらいことですが、何かの事故か病気で亡くなったのなら、お葬式ができてお墓に手を合わすこともできます。生きているか死んでいるかも分からないままずっと過ごすのとどっちがつらいのでしょう。死んだわけではないから、いつか会うことができるかもしれないというのは希望かもしれませんが、会えないこと、死んでいる可能性をずっと気に病んで苛まれ続ける呪いでもあります。経験のないことなのでそのつらさが計り知れません。しかし、経験があったところでケース・バイ・ケースでつらさの絶対性などないのでしょう。とにかく何か他の苦しさと比較にならないくらいめちゃくちゃ苦しいことだけは想像できます。

 ジョンヨンが夫を亡くして、茫然としていると匿名の連絡があります。海沿いの田舎町の釣り堀にユンスらしき子どもがいると言うのです。その子はユンスではなく、ミンスと呼ばれています。チラシに書かれた火傷の痕もあります。

 その情報をもたらした人は、地元の若い警察官でした。彼は上司に毎日のようにこっぴどく殴られています。また、ミンスは釣り堀の経営者の一家やスタッフに殴られたり、池に落とされたり、学校にも行かせてもらえず雑用をさせられています。夜は鍵の掛かった汚い部屋に寝かされて、もう一人いるミンスより幼い5歳くらいの子どもが贔屓(ひいき)されています。日本なら警官の上司が部下を殴るのも問題になるし、子どもの虐待は警察に通報されて逮捕される社会で、日本とは違った基準での生活が描かれており、どこまでが許される体罰でどこからが虐待なのか、ちょっとモヤモヤします。しかし子どもにとって明らかに劣悪な環境です。

 釣り堀一家はジョンヨンの来訪を快く思わず、ミンスに会わせようとしません。ミンスはその一家のおばあさんが連れて来た親戚の子であると話します。ジョンヨンは夜中にこっそり釣り堀に侵入して、どこかにミンスが隠されているはずだと調べます。

 「田舎ホラー」という映画のジャンルがあります。都会人が辺鄙な田舎にやって来て、無教養で粗暴な田舎者に散々な目にあわされるという物語構成で、この映画もまさにそのように展開していきます。チョンヨンは潜入調査中に釣り堀一家に発見され、監禁されて命からがら脱出し、見つかって殺し合いになります。その格闘ぶりが、まったく普段武道や格闘に触れていない人同士の生々しい殺し合いで、異様にスリリングで韓国映画の真骨頂です。

 ようやく苦労して会うことができたミンスは高波に飲まれて亡くなってしまいます。しかし、もう一人の子どもを救出することに成功します。

 ソウルに戻ったジョンヨンは、ユンスを未だに捜していました。波に飲まれたミンスは遺体が干潟で発見され、ユンスではありませんでした。車を運転するジョンヨンに電話があります。釣り堀で助けた男の子からの電話でした。彼をソウルに連れ帰って里子にして一緒に暮らしていたのです。男の子はジョンヨンにとても懐いているような親し気な声で話し、ジョンヨンもとろけそうな顔で会話します。ジョンヨンの表情は明るく前向きで、ユンスを捜しつづけていても、悲しみに暮れてはいません。これこそが、血縁がなくても愛する子どもが近くにいてくれることの救いです。

 里親映画として紹介するには本当にささやかな場面なのですが、苦しんでいる人が里親活動で救われることが描かれています。地元での上映が終わっていて、DVDの発売が2月のため、見返すことができず男の子の名前も年齢も正確なところが分からなくて、申し訳ありません。

 育児シーンは電話での会話だけなので1、声の感じで愛着度は9です。里親映画度はほんのワンシーンしかも会話だけだったので1です。

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全国上映中!2月より新文芸坐、下高井戸シネマでも順次公開

◇「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」公式サイトはこちら

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