「女子少年院の少女たち」親の性虐待、ネグレクト…社会の無関心が少女を犯罪に走らせる
竹谷直子 (2020年12月4日付 東京新聞朝刊)
少年院を出た若者の自助団体、NPO法人「セカンドチャンス!」(東京都)の女子代表を務める中村すえこさん(45)が、女子少年院で出会った少女4人の姿を追った「女子少年院の少女たち」(さくら舎)を出版した。「被害者にも加害者にもならない社会にするために、何ができるか考えてほしい」と話した。
自助団体の代表・中村さんが本を出版
著書は、中村さんが制作した2019年公開のドキュメンタリー映画「記憶」に登場する少女4人との会話やその後を収録。ある少女は母親の影響で薬物に溺れ、生活のために窃盗を繰り返して逮捕された。児童養護施設で育ち、頼れる大人がいないままに社会に出て覚醒剤使用で少年院に入った少女の姿も描いた。
中村さんは、全国の女子少年院で、親からの性虐待やネグレクトなどを経験した少女に多く出会った。「少年院で初めてまともな大人に出会った子もいる」と指摘。「社会の無関心が犯罪を生み出す面もある。『知らない』ではなく、社会問題だと認識し、意識を変えていくことが大切だ」と呼び掛ける。
自分を信じてくれる大人に出会って更生
中村さん自身も少年院に入った経験がある。家計を支えるために昼夜を問わず働く母親と暴力をふるう父親の下に育ち、寂しさから非行に走った。15歳で暴走族の総長になり、傷害事件を起こした。仮退院後には暴走族を破門になって居場所を失い、覚醒剤に手を出して再び逮捕された。
更生できたのは、母親の愛情を再確認できたことに加え、自分を信じてくれる大人に出会ったことがきっかけだった。家庭裁判所の調査官が少年院送致を求めず「今の君なら社会で十分にやっていける」と背中を押してくれた。私立高校に事務職として勤めながら、今年3月に通信制大学を卒業し、社会科の教員免許を取得した。「セカンドチャンス!」では、講演や出院者の居場所づくりに取り組む。
1400円(税抜き)。四六判、232ページ。全国の書店やオンラインストアで販売している。
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