コロナ禍で仕事を休む親に、助成金が届いていない 予算執行わずか24% 雇用主が申請ためらう理由は?

木谷孝洋 (2020年12月28日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 新型コロナウイルスの感染拡大で子どもが学校を休む際に働く親も休みを取りやすくする政府の助成金制度が十分に活用されない状況にある。3月の制度創設以降、予算執行率は4分の1に満たない。助成を申請する勤務先の企業などが業務の停滞などを嫌って利用をためらう例が相次いでいるからだ。 

図解 「小学校休業等対応助成金」を巡る経緯と問題点

3月に制度創設 日額で上限1万5000円

 政府の「小学校休業等対応助成金」は、2月末に当時の安倍晋三首相が一斉休校を要請した際、収入が減る保護者に「しっかりと手当てする」と表明し、政府が設けた。企業などが従業員に通常の年次有給休暇とは別に、特別の有給休暇を取得させた場合、賃金の全額(現行で日額上限1万5000円)を助成する。

 小学校の一斉休校時だけでなく、幼稚園・保育園の登園自粛要請に応じたり、疑いを含め子どもが新型コロナに感染して休んだりした時も利用は可能。通常の欠勤や有給休暇として処理した休みにも、さかのぼって適用できる。

経営者の不満「不公平、業務回らない」

 厚生労働省は2020年度補正予算(1次、2次)でフリーランスら個人事業主向けの支援金と合わせ、計1719億円を確保した。だが給付は今月18日時点で407億円。執行率は24%にとどまる。

 経営者の中には「出勤している人と不公平になる」「休まれると業務が回らない」と、申請に二の足を踏むケースが多いという。全国の労働局には「制度を利用できない」との相談が約1500件寄せられている。

個人申請できる制度求め、署名1500筆

 支援を受けられなかった親たちは、個人でも申請できる制度に変えるよう求める署名をインターネット上などで1500筆分集め、今月17日に厚労省に提出した。

 だが、厚労省側は個人申請について「仕事を勝手に休んで助成を受けることも可能になる。あくまで事業者に納得して利用してもらうことが必要」と、制度変更には消極的だ。

利用拒否された2児の母「企業に申請の強制力を持たせるか、個人申請を認めるべき」 

図解 「小学校休業等対応助成金」を受けられなかった親たちの声

会社が「ギブ・アンド・テイクじゃない」

 「従業員の命や健康、家族より仕事を優先させた会社に不信感を覚えた」

 高橋純子さん(45)=東京都新宿区=は、勤めていた学習塾運営会社に小学校休業等対応助成金の利用を拒否され、その後、体調悪化で退職を余儀なくされた。

 小学6年と2年の息子を育てながらフルタイムで働き、広告制作などを担当。勤続20年で仕事にやりがいを感じていた。

 状況が一変したのが一斉休校が始まった3月。近所に頼れる親族もなく、子ども2人を「丸1日、自宅に放置して働いていた」という。5年前に離婚を経験。家計を1人で支えていたため、欠勤で収入が下がるのは避けたかった。

 助成金制度を知り、収入減を気にせずに子どもの面倒も見ることができると期待して、会社に問い合わせた。

 しかし、会社から「ギブ・アンド・テイクじゃないから、申請しない」と言われた。コロナ禍でも業務はある以上、会社側には利点がないとの考えだった。

子どもを家に置いたまま働いていいのか

 高橋さんは労働局に相談することも考えたが、会社との関係が悪化することを考えてためらった。子どもを自宅に置いたまま1日10時間以上働くことに強いストレスを感じるようになり、勤務中に涙が止まらなくなった。病院で適応障害と診断されて休職し、8月末に退職した。

 本紙は、会社側に事実関係の確認と見解を求める質問書を送ったが、担当者は「回答を見送る」とした。

 高橋さんは「制度をつくったなら、企業に対して申請の強制力を持たせてほしかった。できないなら、労働者個人の申請も認めるようにすべきだ」と訴える。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年12月28日

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