【イクメンブルー・上】理想のパパでいたいけど… 家と職場で板挟み
家事・育児の分担「これ以上は無理」
東京都の多摩地域に住む会社員男性(39)は「娘の笑顔に癒やされる。育児は楽しい」と話すイクメン。しかし最近、契約社員の妻から求められる家事と育児の分担の割合が「極限にきている」と感じている。
男性は妻より通勤時間が短いこともあり、毎朝5時半に起きて朝食を作り、 7時に一人娘(5つ)を連れて家を出る。保育園に預けた後、1時間ほどかけて出勤。勤務後も週2回は娘を迎えにいき、晩ご飯を作り、風呂に入れて寝かしつける。娘が急に熱を出したり、妻と娘が同時に寝込んだりした時なども、会社を休んだり早退したりした。
男性は平等に負担しているつもりだが、妻からは今以上の分担を求められる。男性は土日出勤や、泊まり出張などで家を空けることもあり、その間、妻に任せているからだ。
分担の話し合いをすると妻と衝突しがち。妻は「あなたは『できない』で終わりでしょ。私だって大事な仕事があるのに」と話す。男性は「充てられる時間はすべて充てている。これ以上は無理」と感じている。
夫が求められるハードルが上がった
夫婦共働きの世帯が増え、イクメンはそれほど珍しくなくなった。社会で女性の役割が増す中、家事を妻と公平に分担するという夫も増えた。そうした変化に伴って、夫が周囲から求められるハードルが上がり、生まれたのがイクメンブルーという言葉だ。ただ、夫の分担を増やすよう求められる一方で、長時間労働はなかなか解消されないなど、夫がより積極的に子育てに参加するための環境改善は必ずしも進んでいない。そこで、家と職場との板挟みで悩む人もいる。
都内の金融機関の総合職の男性(33)は、別の金融機関で総合職として働く妻との間に2人の娘がいる。
長女が生まれたのは6年前。妻は出産後3カ月で職場復帰した。業務内容が同じこともあり、妻と家事育児を平等に分担してきた。男性は「当然のこと」と苦にしなかった。
「ちょっと抜けます」でお迎え、ご飯、風呂
ただ、男性の職場は残業が当たり前という雰囲気。同僚は定時を過ぎても黙々と作業し、午後9時、10時からの会議も珍しくない。とても上司に「定時に帰らせてほしい」とは言い出せない。男性は「ちょっと抜けます」と伝え、娘を保育園に迎えにいき、ご飯と風呂を共にし、帰宅した妻に娘を託し、会社に戻ったこともあった。
男性がつらかったのは、職場に相談相手がいないこと。両立の悩みを一人で抱え込み、「メンタルが悪くなる」と悩んだ。相談した妻は「私はできるのに。あなたはなぜ」。男性はつい反論してしまった。「職場での見られ方が男と女では違う」
根強い「仕事第一」…まじめな人ほど悩みがち
男性が抱えがちな悩みや葛藤を「男性学」として研究する大正大の田中俊之准教授(社会学)は「家事育児を進んでするようになった男性は、仕事との両立の大変さを実感するようになった。『男性は仕事が第一』という価値観はまだ根強く、家事育児にまじめな人ほど悩みがちになっている」と話す。
5月5日付の(下)では、そんなパパたちはどうしたらよいか考える。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい