医療的ケア児らがポニーの乗馬体験 専門家のサポートで家族も安心 碑文谷公園こども動物広場で

 医療的ケア児と家族のみなさんがポニーの乗馬などを体験するイベント「ポニーと楽しい時間を過ごそう♪」が6月下旬に東京都目黒区の碑文谷公園こども動物広場で開かれました。目黒区や近隣の区から家族連れ7組が参加し、乗馬やえさやりなどを体験しました。
写真 ポニーと楽しい時間を過ごそう

ポニーに乗る医療的ケア児(右から3人目)。作業療法士らがサポートした=目黒区の碑文谷公園こども動物広場で

最初は緊張、そして笑顔

 今回のイベントは、目黒区の指定管理者として広場を運営する公益財団法人ハーモニィセンター(東京都渋谷区)と、医療法人社団のびた(東京都世田谷区)のスタッフら約10人が運営に携わりました。馬だけではなく、医療の専門家が参加し、安全面に配慮したものです。

 参加した医療的ケア児らは作業療法士や理学療法士に支えられながらポニーに乗りました。背中などを支える療法士は、その子の首や腰の据わり具合に合わせ、サポートします。引き馬をするスタッフも「気持ちいいね」「すごいね」などと声を掛けながら、広場内を回りました。最初は緊張している様子だった子も、乗っている間にどんどん笑顔になっていく様子がみられました。

写真 馬に乗るきょうだい児

きょうだい児ら家族も馬に乗って楽しんだ

 家族も一緒に楽しむイベントのため、きょうだい児や両親らもポニーに乗りました。自分が乗馬した後、スタッフから「ママも馬に乗るよ」と声を掛けられ、びっくりしながら母親を見守る子もいました。

 乗馬の後は、馬をなでてお礼を伝えたり、ニンジンをあげたりしました。

写真 ポニーと楽しい時間を過ごそう

乗馬したポニーの首をなでる子どもたち

写真 ポニーと楽しい時間を過ごそう

乗馬したポニーにニンジンをあげる参加者。安心してあげられるよう、竹にニンジンを挟んだ

 脳性まひの3歳男児と参加した目黒区の自営業女性(43)は「まだ体幹が安定しないので遊具や乗り物はなかなか乗れない。理学療法士さんたちがいて安心して乗せてもらえるし、私たちは写真を撮ったりできるのでうれしいです」と話していました。

馬ならではの効果あり

 参加した作業療法士の渡邊絵都子さんは「医療的なケアが必要な子でも馬に乗ることができるのはいい機会。ご家族のかたも馬に乗って、非日常の活動を一緒に体験することで、QOL(生活の質)の向上につながると思います」と説明しました。

 学生時代まで乗馬を本格的に学んでいたという理学療法士の石田輝也さんは「馬の刺激は温かさを含め、子どもにとって心地よい刺激なので普段のリハビリではできない力の抜き方、入れ方ができることがあります」と乗馬体験ならではの効果をアピールしました。

 ただこのようなイベントの実施には馬はもちろん、専門家の参加も不可欠で、費用がかかります。今回は目黒区の指定事業の枠組みで実施しており、渡邊さんは「行政の助成金などサポートがあれば安心して開けます」と話しました。

 公益財団法人「ハーモニィセンター」事務局長の金山竜也さんは「こういった身近な場所で馬とふれあうという特別な体験ができることが、医療的ケア児とそのご家族が『外に出てみよう』という気持ちを持つきっかけになればと願います。医療者の協力を得たり、資金を確保したりという実施上の課題はありますが、少しずつ機会を増やせればと考えています」と今後の見通しを含め、話してくれました。

ポニー

 ポニーは体高147センチ以下の小型の馬です。碑文谷公園こども動物広場では、安全に活動ができるように調教された人懐こく、おとなしい馬が活躍しています。

医療的ケア児

NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院した後、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な子ども。こども家庭庁によると、在宅で暮らす医療的ケア児は2023年時点で全国に約2万人いると推計されています。

2021年9月には医療的ケア児とその家族を支援する法律「医療的ケア児支援法」が施行された。ケア児の健やかな成長と家族の離職防止のため「社会全体で支える」ことを理念に掲げています。また都道府県による支援センター設置を盛り込んだほか、看護師らを配置するよう、保育所や学校に求めています。

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