馬と人の絆ってこんなに強いんだ!獣医、装蹄師…小学生15人が馬事公苑を取材【こども記者が行く!馬のお仕事ツアー編】

参加者の集合写真

イベントの最後には、みんなで記念写真を撮りました=東京都世田谷区のJRA馬事公苑で

 東京すくすくなどによる体験イベント「こども記者が行く!馬のお仕事体験ツアー」(東京新聞を発行する中日新聞東京本社内に置かれた「馬と人をつなぐ実行委員会」との共催)が7月30日、世田谷区のJRA馬事公苑で開かれました。小学3年から6年の15人が「こども記者」として、獣医師など馬を支える三つの仕事を取材。馬術競技のオリンピック選手らの案内で乗馬も体験し、馬と人の関わり方を学びました。
馬事公苑正門の写真

東京都世田谷区にあるJRA馬事公苑の正門

東京五輪の競技会場に潜入!

 世田谷区上用賀にある馬事公苑は、JRA(日本中央競馬会)が運営する馬術振興の拠点です。

 1964年と2021年の東京五輪では馬場馬術の競技会場となり、2023年にリニューアルオープンしました。緑の多い広々とした敷地には、屋内外の競技会場や厩舎(きゅうしゃ)のほか、馬についての資料が並ぶギャラリー、乗馬を疑似体験できるシミュレーター、キッズスペースなどもあります。

 朝8時、そんな施設を興味津々に見回しながら、こども記者たちが集まってきました。

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案内役は東京五輪にも出場した北原広之さん

 まずは、案内役のJRA馬事部の北原広之さんが注意点などを説明します。2021年東京五輪の馬場馬術に出場した北原さんが「乗馬、したことある人?」と聞くと、半分以上の子が手を挙げました。続いて、私が先生記者として質問やメモのコツを手短に話し、早速取材に繰り出します。

お世話係、装蹄師、獣医の仕事とは

 取材する仕事は、馬のお世話をする厩舎スタッフ、獣医師、馬の靴屋さんとも言える装蹄師(そうていし)の三つ。「にんじんチーム」と「りんごチーム」の2班に分かれ、それぞれ順に巡っていきました。

 私はにんじんチームの8人に同行し、最初は厩舎へ。ブラッシングや餌やりを体験しながら教わります。スタッフに「質問は?」と水を向けられると、「走る速さはどのぐらいですか?」「何年ぐらい生きるんですか?」と、矢継ぎ早に質問が飛び出します。

馬のブラッシング方法を教えてもらう様子

スタッフに熱心に質問するこども記者ら

馬のブラッシングを体験する様子

ブラッシングも体験

 その姿に私はびっくりしました。

 というのも、取材に出る前に「質問を考えてきた人は?」と聞いた時は、誰も手を挙げなかったからです。緊張してるのかな、控えめな子が多いのかも…と少し不安だったのですが、心配無用でした。スタッフさんにブラッシングする理由を聞くと、馬をきれいに保つだけでなく、「皮膚病から守る意味もあります」と説明してくれました。

休憩中もメモを確認し合う姿が

 東京はこの日も最高気温が35度近く、朝からすごい暑さに。熱中症対策のため、取材と取材の間はエアコンの効いた部屋で必ず休憩しました。最初の休憩で、早くも冗談を言い合って打ち解けた雰囲気です。お互いに初対面、学年もバラバラなのに、動物好き同士で気が合うからでしょうか。厩舎でメモした内容を確認し合う子もいて、「取材班」の一体感が頼もしい限り。

メモをとるこども記者の写真

熱心にメモを取るこども記者

次は「馬の靴屋さん」こと、装蹄所へ。左後ろ足の蹄鉄(ていてつ)を取り換える作業を見せてもらいました。

蹄鉄の写真

ずらりと並んだ蹄鉄

装蹄前の馬の状態を見る写真

まずは馬を歩かせて、状態を確認

 馬の歩き方を見て爪の様子を確認した後、装蹄師さんがすり減った古い蹄鉄を外し、大きなペンチのような道具とヤスリで爪を平らに仕上げ、新しい蹄鉄を真っ赤に熱してハンマーで整えていきます。熟練した手つきを、こども記者たちは集中した良い表情で見つめ、メモを取ります。

 「やりがいは?」と質問すると、もう一人の装蹄師さんが「たくさんあるよ。爪の病気は早く見つければ早く治る。治療した馬が良くなってくれるとうれしいね。あとは、自分が(蹄鉄を)打った馬がGI(重賞レース)で勝ったときかな。とても良い仕事ですよ」と教えてくれました。

装蹄師の仕事を見学するこども記者の写真

蹄鉄を打つ、装蹄師さん

 装蹄師になるための学校は日本で唯一、宇都宮にあり、資格を取った後も一人前になるまでに5年から10年はかかるとのこと。

馬とのコミュニケーションはどう取る?

 最後に獣医さんの仕事場へ。脚の後ろ側で筋肉と骨をつなぐ腱(けん)のエコー検査を体験しました。

獣医師の仕事について聞くこども記者の写真

エコー検査についての説明を聞くこども記者ら

馬のエコー検査を体験するこども記者の写真

全員がエコー検査を体験した

 獣医師さんが「人間もアキレス腱が切れてしまうことがあるよね。馬も、速く走ったり大きな障害物を跳ぶとそういうけがが起きます」と説明し、検査を手助けしてくれました。「仕事で大切にしていることは?」との質問に、もう一人の獣医師さんは「馬は言葉が話せないので、表情を見逃さないようにしています」。怖がっている、怒っているといった感情は、耳の動きなどで読み取れるそうです。

馬術ショーに親子とも感激

 無事に三つの仕事の取材を終えると、障害馬術のショーを見学しました。こども記者たちの身長ぐらいの障害物をさっそうと跳び越えていく姿は、間近で見ると迫力と優雅さがあります。

障害馬術ショーの様子

馬は障害物をふわりと越えていく

 解説してくれたのは、パリ五輪総合馬術団体の銅メダリスト、戸本一真選手です。「ただスピードを出せばいいのではなく、リズム良く。『6歩で』『7歩で』と人が指示を出して、馬も『この速さで行けばいいんだよね』とコミュニケーションを取っています」との言葉に一同納得していました。

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解説してくれた戸本選手

その後、こども記者たちは乗馬を体験したり、戸本選手に銅メダルをかけてもらって記念撮影したり、笑顔がこぼれます。

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全員が乗馬を体験

戸本一真選手とこども記者の記念撮影

記念撮影でにっこり

3つの仕事を体験し、こども記者たちはJRA馬事公苑の内門陽司苑長から修了証書を授与されました。

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内門陽司苑長から修了証書を授与されるこども記者

ネタはたくさん 何を取り上げる?

 お楽しみの後は、いよいよ新聞製作に挑戦します。

新聞記者がアドバイスする写真

新聞製作のアドバイスは谷岡聖史記者から

 「みんな、取材はしっかりとできていました。だから大丈夫。決まった正解はなくて、自分が伝えたいことを書くのが正解です」とアドバイスして、早速始めてもらいました。

写真

写真

熱心に取り組むこども記者ら

 書きたいことが決まったのか、半分ぐらいの子はすぐに見出しや記事に取りかかります。残りの半分は、書きたいことが多くて迷っている子や、何から始めたらいいか悩んでいる子。でも、「今日どうだった? いろいろあったよね」と話していくうちに、自分のテーマが決まっていきました。

こども新聞の写真

すてきな見出しが付いた

 渋谷区の小学5年、吉田悠一郎さんは、将来の夢でもある獣医師の仕事をテーマに選びました。「馬は暑さに弱いことや、たくさんの人が手をかけて元気に暮らしていることが分かった」。生き物が大好きでイモリやクワガタを育てているという世田谷区の小学6年、佐藤亘さんは見事な馬のイラストを添え、厩舎の仕事を記事に。「ブラッシングは大変だったけど達成感があった。今以上に生き物を大切にしたい」と話していました。

こども記者が新聞をもつ写真

完成した新聞と記念撮影

 製作中、一人一人の新聞づくりを眺めていると不思議な気持ちになりました。同じ時間を過ごしていても、心に残ったことや感じたことは、それぞれこんなにも違うものなのだな、と。なかなか知る機会のない馬のお仕事をしっかり見て、聞いて。自分だけの新聞ができ上がりました。こども記者の皆さん、すてきな夏の思い出になりましたね。

こども記者の作品はこちら

こども記者が作った新聞

こども記者が作った新聞

こども記者が作った新聞

こども記者が作った新聞

こども記者が作った新聞

こども記者が作った新聞

こども記者が作った新聞こども記者が作った新聞

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