保護馬が穏やかに過ごせる場 埼玉県日高市の「つばさ乗馬苑」 ふれあい体験で子どもたちにも情熱伝わる

小野里美保
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パインに乗る参加者。後半は駆け足にも挑戦(埼玉県日高市のつばさ乗馬苑で、写真は福永忠敬撮影)

 中日新聞東京本社内にある「馬と人をつなぐ実行委員会」が6月中旬、埼玉県日高市の「つばさ乗馬苑」(土谷麻紀理事長)で開催した「馬と子どものふれあい体験」の運営を担当しました。昨年から取り組んでいる引退馬支援の一環で、子どもたちは馬のブラッシングや餌やりを通じて引退した競走馬の「第2の人生」について考え、命の大切さなどを学びました。

行き場を失ったけれども…

 つばさ乗馬苑にいる多くの馬たちは、処分されそうになっていた保護馬です。引退した競走馬のほか、足が遅くて競走馬になれなかったサラブレットや、ペットとして飼われていたけれど飼い主が手放したミニチュアホースなど、行き場を失った不遇な馬たちですが、つばさ乗馬苑では穏やかに過ごしています。

 子どもや保護者らの乗馬体験を一手に引き受けてくれた乗用馬の栗毛の馬「パイン」は、全員を乗せ終わるまで馬場を何周もしてくれました。

 パインは以前、別の施設で過ごしていました。当時の厳しい調教の影響からか、人間が大嫌い。スタッフが触ろうとすると後ろ足で蹴ろうとしたりしていました。「再調教は無理だろう」と処分される寸前、つばさ乗馬苑に引き取られました。土谷さんたちスタッフが優しく声を2年間、かけ続けてやっと心を開いてくれたそうです。今では、乗馬体験のほか、子どもや障がい者を対象にしたホースセラピーで日々活躍しています。

 馬にも心があります。気性が荒かったり、とても臆病だったりしていた馬たちに、人間が愛情深く根気よく接することで少しずつ変わっていく…。子育ても同じかもしれません。一度傷ついてしまった心を回復させるには時間がかかります。土谷さんの話を聞きながら、自分に重ね合わせ、子どもに厳しくあたってしまった日々を反省し、涙が出てきました。

保護者らにも熱意伝わる

 参加者アンケートでは「(イベントに)携わる方、皆さんが一生懸命であったことも印象的だった。熱意を持って取り組まれていることに感動した」「馬への愛情があふれた素敵なイベントでした」など、土谷さんたちスタッフの情熱が伝わったようでうれしく思いました。

 終了後、朝から運営を手伝ってくれていたひとりの青年が声をかけてくれました。彼は小さい頃から20年ほど乗馬を継続していて「自分は馬と一緒に成長した。馬に成長させてもらった。今では馬の気持ちがわかるようになった」と馬への愛をたくさん語ってくれました。障害のある彼は現在、馬術競技の大会に出場しているそうです。

 東京すくすくでは、今後も引退競走馬、保護馬に対する理解を広めるイベントに取り組んでいきます。

「馬と子どものふれあい体験」イベントの詳細は、こちらからご覧ください。

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