タレント 滝沢カレンさん 厳しいおばあちゃん、断トツで変わっていたママ…よく一つの家族に集合したなと不思議です

川合道子 (2025年11月23日付 東京新聞朝刊)
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家族について話すタレントの滝沢カレンさん(市川和宏撮影)

 

カット・家族のこと話そう

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです

全員そろって「いただきます」

 家族を思い浮かべるときにポンッて出てくるのが、子どもの頃の食卓なんです。長方形のテーブルに4人の椅子があって、そこから外で飼っていた犬のマーシャが見える。おじいちゃん、おばあちゃん、ママがいて、あのときは、みんなでこんな話をしていたなあ、なんて思い出します。

 4人が家にいる日は、必ず全員そろってから「いただきます」を言って、お箸を持つのが決まり。おばあちゃんが「それが家族だ」と。ご飯は焼き魚なんかと豚肉がちょっと入っている野菜炒めが毎日のメニュー。秋に栗ご飯が出るような家ではなかったけど、それぞれの誕生日ごとにステーキを焼いてくれて、それがすごく楽しみでした。

おばあちゃんが牛耳っていた

 おばあちゃんは、この家族を牛耳っていた人。おしゃれが大好きだけど、とても厳しくて「玄関は美しくあれ」とか「人よりも上に立つな」とか。いつも人さまを大事にしていました。家を散らかすのも嫌いで、バッグを床に置くことも駄目。でも厳しすぎたことはなく、私にとって必要なものをいっぱい詰め込んでくれて、今もはがれないシールみたいに染み付いている。

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滝沢カレンさん

 おじいちゃんは、おばあちゃんとはまったく逆の人でした。だから2人は結婚したんだろうなって思うぐらい。おしゃべりで、とにかく両手にたくさんの友達と登山したり旅行に行ったり。家ではいつも目元が下がっていて、優しくて太っていて。建築の仕事をしていたので、部屋には図面を書く道具なんかもありました。かっこいい部屋に入れるのはうれしかったな。

 そしてママ。家族の中でも断トツで変わっている人でした。クラシックバレエが大好きでロシア語やウクライナ語ができたので、通訳や本の翻訳もしていました。いつも忙しくしていてエネルギーがいっぱい。大好きなママだから心は隣にあるんですけど、すごく遠くで生きているような感覚。だからこそずっと魅力を感じていたと思います。

今は異世界の人、でもいつか…

 3人とも血のつながりがあるから一緒に住んでいたわけだけど、それにしたって、こんなにも違う人たちがよく一つの家族に集合したなと不思議です。今は3人とも亡くなって異世界の人。でも、それぞれどこかを旅しているだけで、また引き連れ合って会うんじゃないかと思うぐらい。

 ただ時間がたつにつれ、思い出はどんどん薄れていく。時間が空いたタイミングで、3人の記憶がなくなる前に文字に残しておきたくなって、本を書きました。書くことによって、過去のものを現在のものにできるような気がして。また3人が私の横に来てくれて、これからの人生を一緒に歩いてくれるような感覚です。理想の家族はやっぱりわが家だし、これからもずっと家族。「ありがとう。またいつか」と思っています。

滝沢カレン(たきざわ・かれん)

 1992年、東京都生まれ。2008年、雑誌「Seventeen」の専属モデルオーディションでグランプリに選ばれ、モデルデビュー。現在は雑誌「Oggi」の専属モデルを務めるほか、ユニークな言語表現を生かしてタレントとしても活躍する。今夏に第1子を出産。10月には子ども時代の家族との思い出をつづった短編集「でかまりなちゃん」(集英社)を出版した。

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