コロナで解雇、自宅待機…子育て中の女性の就労難 再出発は心のケアから NPOが支援講座
コロナ禍で手取り15万が半分に
都内で中3、小6の娘2人を育てながら、6月から事務職の派遣社員として働く女性(46)。収入は手取りで月23万円ほどだ。「今後は教室に通ってパソコンの技術も身につけたい」と表情は明るい。
正社員として以前勤めていた運送会社は、コロナ禍で物流が減った影響から、仕事が激減。休業手当などの説明は何もないまま自宅待機を余儀なくされ、手取り約15万円だった給与は半分に落ち込んだ。
夫のモラルハラスメントやDVから逃れるため、4年前に離婚。もともと生活は苦しかった。転職しようとハローワークにも行ったが「これといった資格や技能はない。子育てで働いていなかったブランクもある」。先が見通せず、孤独感にさいなまれた。
全6回の無料オンライン講座で
立ち上がる力になったのが、困窮子育て世帯を支援するNPO法人キッズドア(東京)が、1月から無料で始めたオンラインの就労支援講座「わたしみらいプロジェクト」だ。第1期は2~4月の全6回で1回90分。性別の制限はないが参加者はほぼ女性で、9割以上がひとり親世帯だ。
精神面をケアし、自己肯定感を高めることが大きな目的。「仕事や育児でモヤモヤすることは」という講師の問いに、まずは一人一人書き出してみる。自分を見つめ、未来像を描く第一歩だ。講師の「失敗しても大丈夫」の励ましが背中を押す。悩みごとを打ち明け合う時間では、抱えていたつらさを初めて言葉にできて、涙を流す人も多い。
少しずつ心を落ち着かせた上で、強みを訴える履歴書の書き方やプレゼンテーションの方法などを学んでいく。化粧品会社の協力で印象を高めるメークの実習も。「化粧は久しぶり」と参加者には笑顔が漏れる。
講座は働く人も参加しやすい平日夜か土曜。来年3月までに計300人の受講を見込む。10月スタートの第3期からは、厚生労働省の助成金1800万円余を受けた。第1期の受講生52人のうち、新たな仕事に就いた人は11人を数える。
「これで娘を塾にも行かせられる」。女性は今、前を向いて歩いている。
女性の労働者が減少 男性の2倍超
総務省の労働力調査によると、初めて国の緊急事態宣言が出された2020年4月の女性労働者は、前月比で74万人も減少。男性35万人の2倍を超える。多くが雇用の調整弁として使われがちな非正規とみられる。
比較的低所得のひとり親の母子・父子家庭への就労支援の一つに、高等職業訓練促進給付金がある。毎月一定の給付を受けながら、条件のいい就職に役立つ資格を取ってもらう。従来の看護師や介護福祉士、保育士などの国家資格に加え、本年度からデジタル分野の民間資格も対象となった。
ただキッズドアが1月、これまで支援をしてきた男女約650人に聞いた調査では、高等職業訓練促進給付金について「知っているが利用していない」が65%。「わたしみらい-」を担当する町田裕輔さん(28)は「そもそも働いている人は、訓練に通い続けるのが難しい」と指摘する。
加えて、国やハローワークなどの就労支援を使った経験がある人も2割弱。町田さんは「パソコンなどインターネット環境がない人もいる。支援が必要な人に支援策の存在が知られていない面がある」と訴える。
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