手話を取り入れたおかあさんといっしょED曲「きんらきら ぽん」 ろう者の写真家・斎藤陽道さんが歌詞に込めた思い
わが家の言葉やしぐさを生かして
おかあさんといっしょは60年以上続く人気番組。NHKによると、エンディング曲に手話が盛り込まれるのは初めてだ。番組を担当する山中康祐プロデューサー(35)が昨年11月、斎藤さんに歌詞の制作を依頼した。斎藤さんのエッセー本を読み、子どもに手話で語りかける様子を日本語にした優しい文体が印象に残っていたという。
「聞こえないので音楽の歌詞を知らない」という斎藤さん。作詞は初めてで、2~4歳向けということもあって当初は苦労した。「聞こえる人のことを考えすぎるのはやめよう。ろうとしてのぼくが、子どもとの生活のなかでよく使うことばやしぐさを見つめ直そう」と考え直し、独創的な言葉を紡いでいった。
「きんらきら」の「ん」の意味は
例えば「きんらきら ぽん」は妻でろう者の写真家もりやままなみさん(36)の手話の拍手の個性を表現した。拍手は、開いた両手を頭の近くで揺らす動き。もりやまさんは最後にパッと手を開くのが特徴だ。
斎藤さんは日本語で「きらきらぽん」と訳すことを思いついた。「でも『きらきら』だとちょっと早く流れてしまう気がしたんですね。妻と子どもの表現をよくみると、最初のほうにほんのちょっとタメがある。このタメを『ん』と捉えて、『きんらきら』としました」
振り付けを担った大原晶子さんは当初、普段通りの振りを付けた上で、斎藤さんが歌詞を手話で表現した映像を見て「暖かい」や「笑う」などのいくつかの動きを取り入れた。春に放映が始まると、聞こえない子の親らから「子どもが手話を発見して喜んでいた」とNHKに感謝の言葉が寄せられた。
この曲で初めて手話に触れる子も
25年ほど前、補聴器をつけて地域の中学校に通っていた斎藤さんは「おはよう」の聞き分けにすら苦労していた。世界を変えてくれたのは、都立石神井ろう学校高等部に進学して出合った手話だった。斎藤さんは、聞き分けの苦労が消え去り、「初めて深く言葉を交わす喜びを感じる事ができました」と振り返る。
今、子育てでも会話を大切にしている。斎藤さん夫妻は聞こえず、子どもは2人とも聞こえることで親子のやりとりに不便があっても、「あなたの話を聞きたい」と子どもに向き合い続けるよう努力している。
そんな日々の会話から「きんらきら ぽん」は生まれた。この曲で初めて手話を知り、興味を持った子どももいる。自然に手話と触れる生活が、子どもたちの世界を広げている。
なるほど!
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