「ビリギャル」著者・坪田信貴さん 子どもをしっかり観察する「教えない、支える指導」 原点は母の言葉です
すぐに答えを教えては学びにならない
九州の片田舎にあるお寺の息子として生まれました。小学校低学年のときに両親が離婚し、8歳離れた妹とともに、母に女手一つで育てられました。
母は幼稚園の先生で、75歳になった今も現役の園長。とてもバイタリティーあふれる人です。母の言葉や子育てに対する姿勢は、僕の教育の原点だなと思っています。
小学生の頃、街中の看板に読めない漢字があったとき、「なんて読むの?」と母に聞くと、本屋に連れて行かれて、漢和辞典を見せられました。普通はすぐに読み方を教えると思うんですが、調べ方を教えられたんです。そういうことが繰り返しあって、だんだん母に聞く前に自分で調べるようになりました。家の本棚には辞書や百科事典、図鑑などがそろっていました。
すぐ答えを教えたほうが早いですが、それを続けていると子どもは人に聞くという解決手段しか学ばない。調べ方を覚えず、本当の学びになりません。個人指導の塾を長年経営し、勉強が苦手、自信がないという子のやる気を引き出すような教育法を実践していますが、「教えない、支える指導」というテーマは、まさに母の教え。映画にもなった「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」は僕が経験した実話を書いたものですが、そのテーマを大切にしていたからこそ実現できたと思います。
ちょっとした表情の変化に気づいて…
母から学んだことの一つに「観察」の大切さもあります。小学生の頃、夏休みの宿題だったアサガオの観察日記が面倒くさくて、適当に書いていました。芽が出るまで何の変化もなくて楽しくないじゃないですか。母は土を取り出して二つに分け、一方を水でぬらして「土の一粒一粒よく見てごらん」と言うんです。「観察っていうのは、じっくり見ることが大事なんだよ」と。確かに、ぬれた方は粒に光沢があったし、においも違いました。よく見ると変化が分かるんだっていうのを結構、強烈に覚えています。
今でも「観察」は大切にしています。例えば塾生のちょっとした表情の変化。一見すると元気でも、昨日と少し違うなと思って「何かあったの」と声を掛けると、「実は学校でね…」と話してくれることがあります。しっかり観察していないと気づけません。母の影響は、今でも大きいです。
今、8歳と4歳の娘の子育て中です。僕自身が父と接した記憶がないので親子関係の作り方はゼロベース。塾講師としては教育のプロのはずですが、実際の子育ては思いも寄らない誤算もあります。それも含めて、家族から学ぶことは多いですね。
坪田信貴(つぼた・のぶたか)
学習塾「坪田塾」塾長。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(通称ビリギャル)著者。心理学を駆使した学習指導法で多くの生徒の成績を伸ばしてきた。「怒らなくても『自分からやる子』が育つ 親の言動○△×」(サンマーク出版)を監修。東京都在住。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
ビリギャルの話って(遺伝的に)地頭がいい子供がきちんとした環境(坪田先生のことです)とマッチしたことによって受験で成功したってことで、世の中の誰にでも当てはめられるケースでもないんだよねー・・・なんて夢の無い話をしてみるテスト。