デビュー10周年のヨシタケシンスケさん「どの道にも宝物が埋まっている」 新作「ぼくはいったい どこにいるんだ」に込めた思い
40歳で絵本作家に 大切にしたことは
ヨシタケさんは、昼は広告美術やコマ撮りアニメの人形制作、夜はイラストレーターという生活を14年ほど続けた後、40歳で絵本作家デビューした。「子どものころの自分が楽しめる絵本かどうか。想像力をどこに向けたら、自分もみんなも幸せになれるか」を大切にしてきたという。
発想絵本シリーズ5作目 テーマは地図
新作は、デビュー作「りんごかもしれない」から続く「発想絵本」シリーズの第5作目。今回は、おつかいを頼まれた「ぼく」が地図を手に歩きながら、さまざまな地図がありそうだとユニークな発想を巡らせる。「クラスのにんげんかんけいのちず」「きもちのちず」などが、シンプルで親しみやすい独特のタッチで描かれている。
普段から思い付いたことを絵や図でメモし、考えを整理しているといい、地図をテーマにした理由について「自分が立っている位置や行きたい場所、何が一番大事なのかなどを図にして俯瞰(ふかん)することで、頭の中を可視化できる。世界と自分を捉え直す本になればいいと思った」と説明する。
回り道でもいい「ぼくのみらいのちず」
今回最も思い入れを込めて描いたページは「ぼくのみらいのちず」だ。「ぼく」が立つ「いま、ここ」から多くの道が広がり、最終的に自分らしい「おとなのぼく」につながっていく。「どのコースにも、それぞれ たからものが かくれているはずだ」という言葉が心に響く。
「僕自身も、いろんな回り道をしたけれど、どの道を通っても、その道でしか見えない景色や手に入れられないものがあった。失敗したら終わりではなく、気軽にチャレンジしたり、やり直したりできる。最終的に君は君らしい大人になるのだから楽しんでいってほしい」との願いを込めた。
「絵本は人生で2回出合い、楽しめる」
家庭文庫を開いていた母親の影響もあり、子どものころから絵本に囲まれて育ったヨシタケさん。中でも大好きだった佐々木マキさんの絵本「やっぱりおおかみ」は、大人になって改めて読んだとき、初めて意味を理解できたという。
「絵本は、子どものころと大人になってから、人生で2回出合い、楽しむことができる珍しいメディア。自分が描く絵本もそうなってほしい」とほほ笑む。
「どの年代の人にも何かしら引っかかり、響くようなテーマを取り入れるようにしている」とも。日常的な一コマから「これってなんだろう」と考える独自の視点は変わらないが、年齢を重ねるにつれ、描くテーマは変化してきた。「今後は子どもが独り立ちをしていくとか、自分が高齢者側になったときに何を思うかもテーマにしていきたい」と話す。
ヨシタケシンスケ
1973年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。絵本作家、イラストレーター。著作に「おしっこちょっぴりもれたろう」(PHP研究所)、「つまんない つまんない」(白泉社)など多数。書店員が選ぶ「MOE絵本屋さん大賞」を7回受賞。2人の息子の父。
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