漫画家夫婦の吉田戦車さん、産後クライシスは無縁 「よし!任せとけ」家事を一手に引き受けた1カ月

漫画家の吉田戦車さん

漫画家の吉田戦車さん。下にいるのは「かわうそ君」のぬいぐるみ

 漫画家の吉田戦車さん(56)は、小学4年生の娘(10)を持つ父親。子育ての日々を育児漫画「まんが親」などで描いてきました。また、昨年、NHKのEテレ「おかあさんといっしょ」の体操の歌「からだ☆ダンダン」の作詞を手がけたことでも話題に。同じく漫画家の妻・伊藤理佐さんとの子育てライフ、特に家事分担のコツや、「産後クライシス」を回避できた夫婦のルールについて聞きました。

「ダンダンの人」料理は自分、学校関係は妻

-毎日、テレビの前で吉田さんが作詞した歌に合わせて子どもが体操をしているという家庭も多いと思います。

 娘はもう小学4年生ですけど、同級生の弟、妹がまだ小さかったりするので、近所にうれしそうにして僕の顔を見てくるちっちゃい子とかいますよ。「ダンダンの人だよ」って言われたりもして。何が「ダンダンの人」だかわかんないんですけど(笑)。そういううれしさはありますね。

-妻の伊藤さんも人気漫画家。共働きですが、家事育児の分担は。

 うちは、自宅と仕事場が兼用という特殊な環境です。分担は、基本的に娘の学校やPTA関係は妻。洗濯も妻。僕は料理を一切任されていて、あと、猫のトイレも僕です。

 娘はだいたい朝8時に学校に行きますが、7時15分なんて時もあると、朝5時半ぐらいに「わあ~、勘弁してくれ~」みたいな感じで起きて、朝ごはんを作ります。

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吉田戦車さんに抱かれた「かわうそ君」のぬいぐるみ

 うちでは、娘が「いただきます」と言ったら、大人が「召し上がれ」と言うことを決めているんですけど、いつだったか妻が「召し上がれ」と言ったら、娘が「お母さん、作ってないでしょ。お父さんが言うんでしょ」と言っていましたね。

産後1カ月は「僕がパシリ」 妻はずっと家に 

-最初から、家事を自発的に担当していたのですか。

 妻が妊娠中に「産後は外に出ないで休む方がいいらしいよ。そうしていい?」と言うので、「よし!任せとけ」という感じで、自分からやりました。自由業ですから、時間の融通がきくわけですよね。

 お互いの両親が長野と岩手で遠かったので、いつもいてもらうわけにもいかず、産後は妻に育児に専念してもらうために僕が洗濯、掃除、買い物、料理をやりましたね。1カ月、伊藤さんは外に出ないで、僕がパシリをやった。

-東京すくすくでは、産後に夫婦関係が急速に冷え込む「産後クライシス」の記事への関心が高く、「うちも」というコメントも多く寄せられています。

 うちは僕が1カ月間、やれることをやったので、それ(産後クライシス)はなかったですけど、それでも妻から不満はきましたから。会社の事情とか、本人の怠惰な気持ちで育児や家事ができなかったら、それは夫婦関係が悪くなるとは思いますよ。だから父親には「極力、頑張ってほしい」としかいえないですよね。職場の協力や理解も必要でしょうし。

昔のお父さん風の「全部奥さん任せ」ではダメ

 僕も急にごはんを作り始めたわけではなくて、一人暮らしの時から自分のご飯を作ったり、掃除をしたりという経験はしていましたから。男性もまず、ごはん作りや掃除、ゴミ出しをスキルとして覚えておく。それができれば、多少なりとも戦力になります。

 核家族化が進んだ今の時代、昔のお父さんのように、全部奥さん任せというわけにはいかないですわね。おじいちゃん、おばあちゃんや近所の手助けがある時代ではないので、夫婦だけでなんとかするとなったら、奥さんも旦那さんも「もう青春は終わった」「自分の自由時間や遊び時間はないんだ」ぐらいの覚悟があってもいいのかなという気はします。僕も、旅行とか本当に行けなくなりましたからね。

妻をフォローする意識 不満は小出しにする

-子育てや夫婦関係で意識していることはありますか。

 なかなかうまくいくものではないですけど、子どもだけをかまうというのではなくて、「妻をフォローする」という意識ですかね。お互いに「最近、私に文句ない?」「俺に文句ない?」という確認をし合いながら、「なんかちょっとでも不満があったら言ってくれ」と。

 単純に「ズボンの中にまたティッシュが入っていたよ」とか、「靴下はひっくり返して出してよ」とか。そういう小さなことから、お互いの不満を消していく。子どもが小さいころは、お互いに子育てにまだテンパっている時期があって、ちょっとしたことで爆発してけんかになることもあったので、小出しにして解消しようというふうになりました。

夫婦のガス抜きになる「第三者」が必要です

-都市部では特に、周囲の助けを得られず、孤立してしまい、「子どもをたたいてしまいそう」「子育てがつらい」という声もすくすくにはたくさん寄せられています。幼い子を育てていて悩んだり、先が見えずに落ち込んだりしている人たちに先輩お父さんとしてメッセージをいただけますか。

 いろいろと難しい面もありますが、自分の親や友人、知人など、誰でもいいのですが、第三者を常に介在させるような状況に自分たちを置くというのは、セーフティーネットになるかなと思います。

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 うちは、子どもがゼロ歳の時に妻が仕事復帰するというので、ベビーシッターさんを頼み、週5日来てもらっていたんです。それがやっぱり、われわれ夫婦にとってもガス抜きになった。他人が家にいることの面倒くささみたいなものもあるんですけど、夫婦げんかになりそうなところがそれでクリアされた。「第三者が必要」と言いたいですね。

 子どもが小さい時は手がかかるので大変ですよ。今は、娘も一人で学校に行って帰ってくるぐらいには大きくなりましたから。小学校に入って、楽になったというのはあります。でも、もうちょっとで、今度は難しい年頃に突入だと思うので、僕も妻もどうしようかなって感じですけどね。

インタビュー動画】吉田戦車さんが子育てについて語る様子はこちらからご覧になれます。

 東京新聞の新しい広告キャラクターが、吉田戦車さんの漫画「伝染るんです。」の登場キャラクター「かわうそ君」になりました。詳しくは「東京新聞ほっとWeb」でご覧ください。

吉田戦車さんの描く「かわうそ君」と「かっぱ君」、東京新聞キャラクター「チョウカンヌ」を用いた駅看板ビジュアル

吉田戦車さんの描く「かわうそ君」と「かっぱ君」、東京新聞キャラクター「チョウカンヌ」が一緒になったポスタービジュアルⓒ吉田戦車/小学館

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  • 忘れていた人 says:

    初めまして 50代のおばさんです。「伝染るんです。」は、若いころ読んでいました。
    かわうそ君可愛いですね。実は、奥様伊藤理佐さんのマンガが好き、で「おいピータン」を永く読んでいます。中年太りで悩んだ時は、月曜断食を始めるきっかけも いただきました。
    奥様原作のドラマ「おいハンサム!!」を見ています。奥様のマンガに、父親役の「吉田鋼太郎」さんが、ご主人の育児関係の記事を読まれている…とあり、辿ってこちらへきました。吉田戦車先生と伊藤さんが ご夫婦だったのを思い出し 全てがつながりました。奥様のエッセイやコラムに、協力者として 吉田戦車先生が出てくるんです。 羨ましい。
    ここから産後クライシスの個人の感想です。m(__)m
    男性が「自分の身の回りの事が ひとりでできる。」のはすごいのです。産後すぐの女性は、普段より体が動かない状態で 赤ちゃんのお世話が続きます。
    ご主人に自分で動いてもらっているうちに、奥様の体力が回復してゆく。「赤ちゃんに慣れてきて、何故泣いているのか理由が分かるようになってくる。」
    仕事から帰ってきて「俺の飯は?!(怒)」と思うでしょうが、奥様に力を貸して助けてあげてほしい。「今日は どうだった?」「体 、大丈夫」声掛けだけでも。
    偉そうに書いていますが、うちは主人が忙しく産後ワンオペでした。身内の介護と重なった時は、血尿が出て泣きました。
    家族の為に働いてくれて感謝しています。今は家事にも協力的で仲良くしています。けれど、ふとした時に思い出す事もあるのです。「産後クライシスの再燃」という記事を読んだ事があり 「ドキッ」としました。女性側は、産後のホルモンの影響や更年期のホルモン影響もあるのかもしれません。楽しい事も共有している(してきた)ので、そちらに目を向けるようにしています。
    成人した子供がいます。ちょうど子育てのころは、主人の仕事が忙しくてワンオペでした。

    忘れていた人 女性 50代

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