男性にも”産後うつ”リスク 女性に比べて支援不足 育休取得率が上がる中、父親同士の「ピアサポート」に注目
あやしても泣きやまない1歳の双子に「もう疲れた」
妻が就職活動に出掛けた後、名古屋市内の平松勇一さん(35)は途方に暮れていた。目の前には、どうあやしても泣きやまない1歳の双子。「もう疲れた」。2019年春のことだ。
妊娠を機に妻は退職し、自身は2018年4月から1年1カ月にわたって育休を取得した。調子を崩したのは、3月に入り妻が仕事を探し始めてから。日中は家事・育児を1人でこなす必要が出てきた。
以前から双子を育てる人のサークルに顔を出してはいたが母親ばかりで、父親の知り合いはいない。孤立感が深まり、心療内科を受診した。ただ4月に双子が保育園に入ると徐々に心が軽くなり、復職する頃には元に戻った。「社会とのつながりがなくなったのがきつかった」と振り返る。
育児に積極的な男性は増えたが、労働時間は減らず
国立成育医療研究センター(東京)は、厚生労働省が2016年に実施した国民生活基礎調査のデータから、生後1歳未満の子がいる約3500世帯を抽出して調査。昨年発表した結果によると、父親が産後1年間に「メンタルヘルスの不調のリスクあり」と判定される割合は11%。母親の10.8%とほぼ同じだった。同センター研究所政策科学研究部部長、竹原健二さん(41)は、育児に積極的な男性が増える半面、労働時間は減らず、負担が大きいことを挙げる。
厚労省の調査では、パートを除く労働者1人当たりの年間総実労働時間は約2000時間で高止まりだ。育休を取れば仕事の負担は一時的に減る。しかし「育休からの復帰後の働き方も含めて社会全体で議論しないと、父親が不調に陥るリスクは高まる」と警鐘を鳴らす。加えて、産後ケア事業の実施が市区町村の努力義務である女性に比べ、男性への支援は不十分だ。
そうした中、父親同士で支え合う「ピアサポート」に注目が集まる。東京のNPO法人ファザーリング・ジャパンは6月、「ファザーリング・スクール2021」をオンラインで開校した。父親を子どもの年齢別に分け、子育て支援団体の代表や大学教授らが助言したり、受講者同士で話し合ったりする。10月末までの週末や平日夜の開講日には、全国から約60人が参加する。
子どもにイライラ、妻への不満…自分だけじゃない
9月上旬の日曜、2~3歳児の「イヤイヤ期」クラスのテーマは、アンガーマネジメント。「在宅勤務での会議中に騒いだ」「ぬれたベランダに素足で出て、そのまま部屋に戻った」など子どもへのイライラのほか、妻への不満もそれぞれ明かし、怒りを抑える方法を学んだ。
参加者は、LINEで普段から悩みを共有。2児を育てる横浜市の会社員蓮沼桜雲(おううん)さん(30)は「悩みや不満を文字にすると冷静になれるし、温かい言葉ももらえる。自分だけじゃない、と心のよりどころになっている」と話す。ファザーリング・ジャパン会員でスクール校長の池田浩久さん(44)は「コロナ禍で父親が対面で集まる機会は、ますます減っている」と指摘。スクールが父親同士がつながれる場になるよう期待する。
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