子ども予算「倍増」の肝心なところを明言しない岸田首相 統一地方選を控え増税議論を避けたい?
官房長官は質問に正面から答えず
松野博一官房長官は16日の記者会見で、東京新聞が倍増のベースとなる予算額を質問したのに対して「まずは政策の中身についてしっかりと検討を進めていく必要がある」と述べるにとどめ、正面から答えなかった。
子ども政策に関する予算には、政府内にさまざまな区分けがある。4月発足のこども家庭庁の2023年度予算案は約4兆8000億円だが、出産育児一時金や育児休業給付などは厚生労働省、幼稚園や小中学校の義務教育に関連する予算などは文部科学省に残り、こども家庭庁予算とは別枠だ。
予算倍増なら最低でも年5~6兆円
省庁横断の枠組みでは、子育て支援に育児休業給付などを加えた約6兆1000億円(22年度)を「少子化対策関係予算」と分類。ほかにも大学教育の充実などを加える区分もある。
政権幹部は倍増のベースとなる予算額について「こども家庭庁予算ぐらいをイメージしている」と打ち明けるが、まだ政府内の共通認識にはなっていない。政府関係者からは「児童手当の大幅引き上げも含め5兆5000億円から6兆円ほどが必要」との声も上がる。これらの議論を踏まえれば、倍増には最低でも年5兆~6兆円を確保しなければいけないことになる。
防衛費の「金額ありき」と対照的
だが、首相は具体的な説明を避け続けている。2021年の自民党総裁選で「(支出は)経済協力開発機構(OECD)で最低水準だ。思い切って倍増していかなければならない」と強調していたのに、昨年1月の国会では「将来的には倍増を目指したい」と述べるだけで、規模だけでなく、期限についても口をつぐむ。防衛費の大幅増で「27年度に国内総生産(GDP)比2%」を「金額ありき」で指示した姿勢とは対照的だ。
政府は長年、少子化対策に取り組んでいるが、出生率は低迷。公的支出のGDP比が低い国ほど出生率が低いと指摘され、OECD調査によると、子ども・子育て支援に関わる公的支出(2017年)は日本がGDP比1.79%で平均(2.34%)以下。出生率を引き上げたフランス(3.6%)や英国(3.23%)の半分程度にすぎない。
結婚、出産、子育てを経済学的に研究する東大大学院の山口慎太郎教授は「研究では子ども予算は税収や財政支出削減などでほぼ返ってくるので、投資と捉えるべきだ。フランスや英国並みに倍増させる必要がある」と指摘している。
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