「異次元の少子化対策」はどこに? 新たに必要な年3.5兆円規模の財源は? 岸田首相は答えず
児童手当拡充「来年末では遅い」
「次元の異なる少子化対策と言っていたが、最近、この言葉が消えている」。立憲民主党の岡本章子氏は、首相が1月に少子化対策を「待ったなしの課題」と位置付けたのに、最近はあまり触れなくなったと指摘した上で、主要政策の児童手当拡充の開始が来年末からでは遅いと問題視した。
首相は質問に正面から答えずに「定額減税は実質的に児童手当の抜本的拡充をさらに前倒しする効果も持つ」と述べ、ここでも所得税減税の必要性を主張。加藤鮎子こども政策担当相は、児童手当拡充に必要となる自治体のシステム改修に9カ月程度かかるとして「支給をさらに早期にすることは困難」と釈明した。
社会保険料に500円程度の上乗せ
政府は6月、3兆5000億円規模の新たな少子化対策「こども未来戦略方針」を決定。その財源として、医療や介護といった社会保障の歳出改革で1兆円超のほか、社会保険料に1人当たり月500円程度を上乗せする「支援金」という仕組みの創設を想定している。
立民の早稲田夕季氏は「支援金」に関して「少子化対策で、社会保険料は上がるのか、下がるのか」と何度も追及したが、首相は「負担の率は決して増えることがないよう制度を構築したい」と明言せず。日本維新の会の藤田文武氏も「詭弁(きべん)だ。実質的に社会保険料の増額じゃないか」と問いただしたが、関係閣僚は「徹底した歳出改革を行う」と曖昧な答弁に終始した。
議論を避け「年末までに考える」
歳出改革で削減が見込まれるのは、高齢者への支出が大半を占める医療や介護の分野。75歳以上の後期高齢者が支払う窓口負担や、介護保険サービスの自己負担を増やすことなどお年寄りが痛みを伴う改革も想定され、立民の逢坂誠二氏は具体策を示すよう訴えた。
だが、首相は「何かを削るだけでなく、介護などITデジタル機器を使った効率化をしていく」と負担増の議論を避けて「財源を年末までに考える」と答弁。逢坂氏は「(少子化)財源すらあやふやな状態で減税だというのはやっぱりおかしい」と首をかしげた。
東京大大学院の山口慎太郎教授(労働経済学)は本紙の取材に「少子化対策は財源がしっかり確保され、長期的に続くという信頼があって初めて政策効果が期待できる。政府がその信頼関係を国民との間で築こうとせず、できるだけ負担の議論を先送りしようとしているように映る」と懸念を示した。
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