休息スペース付き一時保育施設「YASMO」でママもパパも休んで 三井不動産が武蔵小杉で運営 - 東京すくすく | 子どもとの日々を支える ― 東京新聞

休息スペース付き一時保育施設「YASMO」でママもパパも休んで 三井不動産が武蔵小杉で運営

北條香子
 親は自分を犠牲にしてもわが子と向き合うべきだ―。そんな風潮に一石を投じる、一時預かり保育施設が、川崎市中原区にある。三井不動産グループが運営している「YASMO(やすも)」。仕掛け人は同社の育児中の社員で、保護者向けの休息室を併設し「ママ・パパも、もっと休もう」と呼びかける。このメッセージを込めた絵本を、全国の公立図書館や子育て支援施設に寄贈する費用を募るクラウドファンディングを13日まで実施している。
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かわいらしい色合いの保育室で思い思いに過ごす子どもたち

保護者用ベッドは12ブース

 11月中旬、JR武蔵小杉駅近くの再開発予定のビル1階にある「YASMO武蔵小杉」を訪ねた。温かな光が差し込む保育スペースでは、子どもたちが保育スタッフと木製のおもちゃで遊んだり、昼寝をしたり、おやつを食べたりと、思い思いに過ごしていた。

 隣室には、保護者向けにリクライニングベッドが置かれた12のブースが並ぶ。子どもの泣き声も遮られ、心地よい波音のBGMの中、睡眠を取ったり、読書したり、マッサージしたりと自由に過ごせる。子どもがいる保育スペースのすぐそばで休めることで、幼い子どもと離れる心理的な抵抗感を和らげる狙いがあるという。

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休息用のブースのリクライニングベッドで休む保護者

子ども預けて外出も可能

 保護者は、休息を取るだけでなく、子どもを預けて外出することもできる。次男(3)を預けた中原区の主婦藤井麻記さん(43)は、急に長男(6)と出かける用事が入り、この日初めて利用したという。「保育所の一時保育は1カ月近く前に予約しないと利用できず、緊急では使いづらい。ベビーシッターを家に呼ぶにも、事前の片付けが大変で…」。そんな中、利用したYASMO。「ここは気軽に預けられることが分かったので、また使ってみたい。疲れは予測できないし、1、2時間でも子どもを預けて休めるのはありがたい」とほほ笑んだ。

 YASMOは今年1月に開設され、同社によると10月末までにのべ2000組以上の親子が利用した。発案者の一人、吉田裕太さん(29)も5歳と1歳の娘2人の父親。「核家族化が進み、育児の不安や悩みを一人で抱え込む『孤育て』が深刻化している」という問題意識が、開設のきっかけになったという。

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YASMOへの思いを語る吉田裕太さん

育児任せきりの反省から…

 長女の乳児期は妻(32)に育児を任せ、仕事に専念していた吉田さんは、「今となっては浅はかだった」と振り返る。妻が育児休業から復帰しようとしたタイミングでコロナ禍に突入。保育園は登園自粛が求められ、子育て支援センターなども休館になった。「妻にとっては、再び社会と接点を持てる矢先だったのに」

 妻は体調を崩すことが増え、夫婦の関係も少しギスギスして「まずい」と感じた。「育児にも気持ちの余裕が必要。誰かに育児を頼って、親がきちんと休んだり、自分の時間を持ったりできるサービスが必要じゃないか。育児中の心身の負担軽減を図るサービスは、少子化対策にもなるはず」。そんなアイデアを社内の事業提案制度に応募したところ、採択された。

 1号店を武蔵小杉に開いたのは、同社が住宅や商業など複合的に暮らしをサポートしている街であることに加え、出生数の多い街でもあることが決め手だった。「YASMOがあるからこの街に引っ越してきた」という利用者もいるといい、吉田さんは「子育てしやすく、より住み続けたいまちづくりに貢献できていると励みになる」と喜ぶ。

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保育スタッフが見守る中、おやつを食べる男児

サブスクで週1、2回利用

 1歳の双子の女児を預けた中原区の主婦西垣幸紗(ゆきさ)さん(32)は夫が転勤族で「次の赴任地にもYASMOのような施設があるといいな」と話す。もともと夫がYASMOの利用を勧めてくれたといい、家が近く、幼い双子を連れてきやすいことからサブスク(定額利用)契約で週1、2回利用し、掃除や食事の作り置きの時間に充てている。「子どもたちといるのは楽しいが、できないことが増えるストレスもある。ここは安心して預けられる」

 「親の自己犠牲の上に、家族皆が幸せでいられるのかな」と首をかしげるのは、育休中で1歳の男児を育てる横浜市港北区の会社員、貴島麻里絵さん(35)。休息のほか自身の受診などの目的で、月2、3回利用している。「親も子も笑顔でいられるために必要なら、使えるものは使うべきだと思う」と言い切る。

 吉田さんによると、10月までの利用実績で最多は1歳児。「国や自治体は産後ケア事業の充実を進めるが、対象は生後1年まで。1歳以降も、休みたいという親の需要はあるが、行政はアプローチできていない」と指摘。店舗拡大と合わせ、行政との連携も視野に入れる。

 2歳と0歳の男児を預けた高津区の佐伯(さいき)容子さん(37)はこの日が誕生日で、夫と久しぶりのデートを楽しんだという。「他県から昨春引っ越してきて、川崎市は子育て支援が充実していると思う。YASMOの利用にも行政の補助があれば助かる」

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保育スタッフと遊んだり昼寝したりする子どもたち

 クラウドファンディングで寄贈費用などを募っているオリジナル絵本「ナマケモノのまねっこたいそう」にはヨガのポーズが取り入れられ、読み聞かせしながら親子が一緒に体を動かすうちにリラックスできればという吉田さんらの願いが込められている。吉田さんは「絵本を通じてさらに『もっと休もう』と言い合える社会を目指していきたい。親が休むためにお金を使って子どもを預けることに罪悪感を持たずに済む社会になるように」と力を込めた。

YASMO(やすも)

 川崎市中原区小杉町1の403の53。午前10時~午後4時(土日祝日は午後5時まで)。対象は生後3カ月から小学校入学前まで。LINE(ライン)から予約でき、空き状況次第で当日利用も可能。保育料金は30分1250円で、きょうだいなど2人以上を預ける場合は割引になる。保護者スペースは無料で利用できる。13日までのクラウドファンディングは「CAMPFIRE」のサイトで案内しています。

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