〈中倉彰子さんの子育て日記〉40・末っ子のデビュー戦

(2015年11月27日付 東京新聞朝刊)

中倉彰子さんの子育て日記

真剣に、楽しげに

 先日、末っ子のシン(5つ)が初めて将棋大会に出場しました。毎年3千人が集まる大きな大会で、昨年参加したマイ(10)とマキ(7つ)は今回は興味を示さず不参加でした。そんな中、「ぼく、出る!」と元気よく立候補したのがシンでした。ただ、シンのレベルは駒の動かし方がわかる程度。「シン大丈夫なの~?」とお姉ちゃんたちも半信半疑で、夕食後に将棋タイムを設けて、みんなで練習しました。

 大会当日、マイがシンの様子を見たいと付き添い、3人で電車とバスを乗り継ぎ、会場の東京ビッグサイトへ。シンは低学年の部の椅子に座り、保護者はラインの外で見守ります。ここからはシン1人です。不安そうにこちらを見ている、まだまだ甘えん坊のわが息子。「やっぱりやだー」と戻ってきたらどうしようと、不安になりました。

 しばらくすると、大きなお兄ちゃんがシンの向かいの席に座りました。「なんだか強そうだね」と心配そうなマイと私。ペコリとお辞儀をして試合が始まり、序盤はまずまずの出だしです。相手は「えっ、ちっちゃいのに定跡知っているの?」という表情(に見えた)。感心しながら見ていると、大事な場面でまったく関係のない両端の香車を動かすシン。ガクッ。思わずビデオを落としそうになりました(笑)。

 その後はチラチラこちらを見たり、首をかしげたり。真剣に、でも楽しそうに将棋を指している様子を見ていると、親バカですが幸せな気分になりました。玉を詰まされ小さな声で「負けました」と言ったあと、こちらを見てニッコリしたシン。「うん、よくがんばったね」と私もうなずき返しました。

場慣れ

 シンは、3局目あたりから場慣れをしてきて、対戦相手や隣のお兄ちゃんと、笑いながら話をしています。いつもの保育所にいる時のシンの表情。対局後に「こうすれば良かったよ」とお兄ちゃんに教わりうなずいていました。「将棋は年齢に関係なく楽しめるゲーム」だと、シンの姿を通して実感しました。まだ大会は早いかなと不安でしたが、参加させて良かったと思いました。

 家に帰るとすぐに、マイがシンを誘って将棋を指し始めました。将棋を見続けて指したくなったようです。将棋って、見ていると自分も指したくなるゲームなんですよね。2人の将棋を横で見ていたマキも含め、来年の大会は3人とも「出場する!」と張り切っています。(プロ棋士)

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