夏休み、子どもに自由な時間を!「無駄」が主体性を育みます
くだらないように見えても…
記者も家事などで手が回らないと、2人の子どもをよく家の中でほったらかしにする。そんなとき、息子(4つ)は折り紙やら厚紙やらを引っ張り出し、はさみで無造作に切ったり、テープを貼ったり。作品なのかごみなのか、親には判別できないものが山積みに。
一見、「くだらない」ことや「しょうもない」ことに没頭しているように見えるが「そんなときこそ、子どもは主体性や能動性を育んでいるんです」。幼児心理学が専門の三重大教育学部教授の富田昌平さん(44)は言う。
富田さんによると、子どもは身の回りのものに自ら価値を見いだし、夢中になって遊ぶ経験を通じて、主体性や能動性を養っていく。こうした力を養うには、まだ論理的な思考ができず、直感やひらめきで行動する7、8歳ごろまでの時期が、特に大切だという。
息子の「作品」も、彼なりに価値を見いだしていたと思うと、ちょっと見方が変わってくる。もし、記者が教育熱心な父親だったら「そんなことよりも字の練習をしなさい」と言ってしまったかもしれない。「子どもを親の管理下に置き過ぎると、子どもが自ら価値を見つける機会を奪ってしまう。親は『無駄』なことに価値を見いだしてあげてほしいですね」
「家でごろごろ」にも意味がある
夏休みは家でごろごろしてばかり…。そんな子は少なくないだろう。親はイライラするかもしれないが、名古屋市で小学校の教員を長年務めてきた育児雑誌編集者の岡崎勝さん(65)は、温かく見守ることが大切だと説く。「学校はスケジュールが細かく決められ、ゆとりが全くない場所。それに従って行動するのは大変なこと。夏休みにだら~っとするのは当たり前です」
子どもが神経を休めたり、妄想にふけったりする「だら~っとした」時間はハンドルの「遊び」のように必要なもので、人生を乗り切るための耐性につながると、岡崎さんは考える。確かに、ストレスや逆境がのしかかってきたとき、「無駄」をたくさん経験した人の方が、たくましそうだ。
ぼんやり過ごす時間 専門家も注目
こうした「特に何もしない」時間について、脳科学の専門家はどう見るのだろうかと、玉川大脳科学研究所(東京都)教授の松元健二さん(51)を訪ねた。ぼんやりと過ごす時間の重要性は、専門家の間でも注目されているという。
松元さんによれば、何かに集中するわけでもなく、ぼんやりと何かを考えている状態は「マインドワンダリング」と呼ばれる。人が課題に取り組む際、休憩してこの状態を体験すると、再開後に成果がでやすいとの研究成果がある。また、脳には何もしていないときにこそ活動が活発化する領域があることも知られている。つまり、ぼんやりする時間にも脳はしっかりと活動し、それがアイデアやひらめきと関係しているかもしれない、ということだ。
「勉強でも、ぼんやりと散歩するなどの時間を取り入れた方が、力が付くかもしれません」と松元さんは話す。子どもたちにはぜひ、ぼんやりする夏を過ごさせよう。
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