給食で愛され半世紀「ミルメーク」秘話 地元・名古屋になかった理由、宮内庁からの電話…
誕生から52年、ついにお膝元で…SNS騒然
昨年末、ツイッター上にはいっとき、ミルメークという言葉があふれた。
ミルメークとは、牛乳に溶かして色と味を変える粉末の調味料。名古屋市守山区の大島食品工業が1967年から、給食用として全国の小中学校に納めている。ただ、おひざ元の名古屋市内の学校で出されたことは、一度もなかった。
しかし、昨年12月上旬から下旬にかけて大きな変化が。市内全261校の公立小学校の給食で順次、試験的に提供されたのだ。SNS上での騒ぎは、それを受けたもの。ミルメークを全国誰もが知る味と思っていた人たちの驚きは大きかった。
創業者の娘「父はずっと待っていたと思う」
なぜ、お膝元の名古屋市の給食でミルメークが取り入れられてこなかったのか。創業者の故・大島裕さんの娘・浅見夏代さん(71)によると、大島さんは、名古屋市役所に友人がたくさんいたため、「ミルメークを売り込んだら、利権絡みで給食に取り入れられたと思われるのでは…」と遠慮したそう。「商品を評価してくれたら、きっと名古屋市の方から声がかかる」と信じ、あえて名古屋市には営業しなかった。
「でも、市の方からすると、『なぜ地元名古屋に営業に来ないのに、他の地域には広がっているのか」と不快に思われたかも」と浅見さん。大島さんは10年前に亡くなったが、「父は、ずっと名古屋市から声がかかるのを待っていたと思うので、やっと名古屋の子にミルメークを飲んでもらえて喜んでいるはずです」
まさかの直電「徳仁親王がお好きなので…」
「私はミルメークと同い年です」と笑うのは、同社名古屋営業所所長の原谷昭久さん(52)だ。ミルメークが誕生した当時は、脱脂粉乳から牛乳へと、戦後の給食が変わり始めた時期。脱脂粉乳と比べ、牛乳は栄養が劣るのではと心配した栃木県学校給食会が「何か良いものを」と依頼したのが開発のきっかけという。当初は、インスタントコーヒーにカルシウムとビタミンを加えたコーヒー味だけだったが、現在はココア、いちご、バナナ、メロン、キャラメル、抹茶きなこ、紅茶の8種類がある。
発売して少し経ったころには、「徳仁親王(当時)がミルメークがお好きなので、入手したい」と宮内庁から会社に電話があり、送ったこともあるそうだ。
もったいない牛乳の飲み残し、減らせるか
2018年の学校給食向けの出荷数は全都道府県で1240万食。瓶から紙パックへと牛乳の容器が変わってきたことから、今はストローの差し込み口にチューブの先を入れる液体タイプも需要が多いという。
「牛乳の味をそのまま味わってほしい」としてきた名古屋市教育委員会の方針転換の背景には、牛乳の飲み残しの多さがある。2017年度、市内の小学校では推定84万本、約4300万円分もの牛乳が廃棄された。名古屋市教委は今後、各校から効果を聞き取った上で、本格的に導入するかを考えるという。
家庭で味わえる!1993年からスーパーに コラボ商品も
「懐かしい味を家庭でも味わいたい」という人たちの要望に応え、粉末タイプのミルメークは、1993年からスーパーなどでも手に入るように。
フジパン(名古屋市)はスナックサンド「ミルメークコーヒー味」と「ミルメークいちご味」を2020年1月31日までの期間限定で販売。パンとパンの間に、ミルメークを使ったクリームが挟まれている。大島食品工業とのコラボは、2018年12月~2019年1月に続き2度目。参考価格は1個110円で、中部や関東などのスーパーの一部で販売されている。
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