東京高専チームが開発した「点字翻訳システム」に5億円の価値! AI活用コンテストで最優秀賞

布施谷航 (2020年9月11日付 東京新聞朝刊)
 人工知能(AI)を活用したビジネスモデルの将来性を競う「全国高専ディープラーニングコンテスト」(日本ディープラーニング協会主催)で、東京工業高等専門学校(八王子市)の生徒7人のチームが、印刷物の文字を点字に翻訳するシステムを提案し、最優秀賞を受賞した。視覚障害者に寄り添った提案は社会性も評価され、「企業評価額」は5億円相当とはじき出された。
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コンテストで最優秀賞を受賞した生徒と指導する山下准教授(後列右端)=八王子市で

印刷物をスマホで撮影 → 1分で点字プリンターに出力

 チームが開発したのは自動点字翻訳システム「てんどっく」。印刷物をスマートフォンやタブレット端末で撮影して送信すると、コンピューターが自動で点字化。1分以内で「点字プリンター」などに出力してくれる。コンピューターが翻訳に手間取った部分は点字翻訳の専門家がAIに正解を学習させる。使えば使うほど、利用者が理解しやすい点字が出力される。

 先月22日にオンラインで開かれたコンテストには、1次、2次審査を通過した全国の11校が出場した。企業家や投資家ら5人の審査員が、技術力の高さや事業化の可能性などを金額に換算して採点。東京高専チームのシステムは企業評価額「5億円」、投資総額「1億円」と算出され、最優秀賞を獲得した。

 チームリーダーの板橋竜太さん(19)は「視覚障害者はビジネス対象ではなく、協力者。システムの利用者を企業に設定した」と説明する。企業が利用者となって飲食メニューや店内案内などさまざまな文字情報の点字化に協力すれば、視覚障害者にとって暮らしやすい社会になり、企業のイメージ向上にもつながる。

障害者へのまなざしも高評価 社会貢献の意欲が向上

 審査員からは「テクノロジーを活用して情報アクセスの不平等を解消する社会的な意義がある」と評価された。技術力に加え、視覚障害者に対する生徒の温かいまなざしも最優秀賞受賞の大きなポイントになったようだ。

 チームのメンバーは「これまでは技術を開発したら終わりだったが、社会での活用を考えるのは新鮮な経験だった」と最優秀賞受賞で社会貢献への意欲を強めた。指導する山下晃弘准教授は「これからも視覚障害者にどのような技術を提供できるか、生徒と探っていきたい」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年9月11日

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