「ガチ泣き」「涙が止まらない」 不登校経験者が強く共感する映画「かがみの孤城」 苦しむ子どもに寄り添うメッセージ
中1の少女が学校に行けず、鏡の中へ
映画は、入学後まもなく学校に行けなくなり、自宅に閉じこもる中学1年生の女の子・こころの心情を追う。行けなくなったのには理由があるのだが、親にも言えなかった。原監督は「ぼくに不登校の経験はないが、気持ちは分かる。人に話して、自分の弱さを認めてしまうことが怖かったんだと思う」と説く。
学校に行けない日々を過ごすうち、外にも出られなくなる。フリースクールに通うことを決めるが、最初の日の朝、おなかが痛くなる。不登校の子どもにみられるストレス性の体の反応だった。だが、理解が及ばない母親には信じてもらえない。
そんな状態のこころは突然、自室の鏡に吸い込まれ、不思議な城に着き、オオカミの面をかぶった少女に、同じような悩みを持つ中学生6人と引き合わされる。「『ファンタジーの力を借りて、こころと6人の少年少女を救いたい』という原作者の意図に共感し、そのように描いた」
「自分も不登校」感想の多さに驚き
映画の公開後、見た人の感想を見聞きして「自分も不登校だった」という人の多さに驚いた。映画のスタッフにもいた。「不登校を経験しても、大人になってちゃんと仕事をしている人がほとんどなんだ」とみている。
子どもにとって学校は大事な場所だ。それでも、行かない選択もあると思う。「学校に行けない時に気づいたことで、人生が変わるかもしれない。不登校になっても少し前向きに受け止めてほしい」と願う。
母親はこころの気持ちが分からなかったが、フリースクールの先生の支えで理解者になっていく。「不登校に苦しむ子どもは映画も見られないだろう。この映画を見た人には、そんな子に声をかけたり、寄り添ったり、以前と少し違った接し方をしてほしい」と呼び掛けた。
上映時間は116分。上映館は東京・新宿ピカデリーなど。
不登校新聞のSNSに寄せられた声
・全体的に感情移入してしまい終始涙が止まらなかった
・一言では言い表せないけど、とにかく当時の自分と所々重なって終始涙が止まらなかったです
・7人の孤城での過ごし方が実際のフリースクールにいる子たちの過ごし方でいいなと思いました
・「こころちゃんが頑張ってるの、お母さんも、私も、わかってる。闘わないで、自分がしたいことだけ考えてみて。もう闘わなくてもいいよ」この言葉、今の自分に対しても、あの頃の自分に対しても、本当に心が安らぐセリフで、ガチ泣きしました(;_;)
「いじめ」でくくれない苦しみ ”闘っている”子どもを認める言葉とは
映画に登場するフリースクールの先生は、外に出られないこころに「闘っているんだね」と語りかける。学校に行けない10代や不登校の経験者が企画や取材で協力する不登校新聞のSNSには、経験者らが「当時の自分と重なって涙が止まらなかった」などと感想を寄せた。
不登校新聞の発行と有料サイトの運営を手がけるNPO法人の石井志昂(しこう)代表理事(42)は、映画を「不登校の子どもの目線に立ち、彼らが見ている景色がどのようなものかを、観客に見せてくれる」と評した。
主人公のこころは「いじめ」という言葉をほとんど使わない。単純にいじめと線引きできないものに苦しめられているからだ。「日本の学校のいじめの特徴は、先生の目の前で起きながら、先生が気づかないこと。標的になった子どもは、いじめという単語でくくれないものに、激しく傷つけられる」と石井さんは説明する。
子どもたちが自分の身に起こったことを人に伝えるのは難しい。親や周りの大人は、どう接すればいいのか。「ほめるのでもなく、はっぱをかけるのでもない。子どもが頑張っていることを認める言葉が必要になる」と指摘した。
小中学校の不登校は9年連続で増加
文部科学省の2022年10月発表によると、2021年度の不登校の小中学生は24万4940人と9年連続で増え、過去最多となった。内訳は小学生8万1498人、中学生16万3442人。要因は小中とも「本人の無気力、不安」が50%近くを占める。「いじめを除く友人関係をめぐる問題」は中学生で12%、小学生で6%。「いじめ」は小中とも1%未満にとどまる。
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