4歳で習い事は必要ですか? お友だちは水泳、ピアノ、英語…焦っています〈宮里暁美の子育て相談〉

(2023年4月18日付 東京新聞朝刊)

ひとりで悩まない 宮里暁美の子育て相談

小学生から、と思っていましたが…

 4歳の娘がいます。習い事はお金もかかりますし、小学生になってからでよいと思っていましたが、水泳、ピアノ、英語などをすでに始めているお友だちが多いと聞き、少し焦っています。子どもの可能性を広げる意味で何か習わせたほうがいいでしょうか。(30代、母親)

子どもが絵を描いているイラスト

イラスト・永須華枝

大人が先に決めるより、身近な安心できる場所で生まれる「やりたい気持ち」を大切に

 習い事は小学生頃からと考えていた、という判断に賛成します。幼児期は家庭や園、近所など安心できる場所で、いろいろなことと出会い、体験を重ねながら「おもしろい」と感じたり「もっとやってみたい」と思ったりすることが大切なのです。

 自分の可能性は自分で広げるものだと思います。お子さんの気持ちが向いていないのに大人の方で「これをやっておくといい」と決めてしまうと、お子さんは期待に応えようという気持ちと初めての体験に対する不安感との間に挟まれ、葛藤を抱えてしまうかもしれません。お子さんの「やりたい気持ち」が、お子さんの中でムクムクッと広がっていく生活を大事にすることをお勧めします。

 こども園の5歳児クラスで将棋がブームになったことがありました。藤井聡太六冠の活躍がきっかけのようです。保育室に将棋コーナーができて将棋盤に向かう姿がよく見られるようになりました。友達や保育者では物足らなくなった頃、Kくんが「しょうぎのあいて、ぼしゅうちゅう」というポスターを作りました。

 ポスターの効果は絶大で、将棋ができるお父さんが「朝なら相手ができますよ」と申し出てくださいました。お父さんと一番勝負をしている時のKくんの真剣な顔が忘れられません。もうすぐ1年生という頃のエピソードです。地域の将棋クラブにも行きたいと本人が言い出し、通うようになったと聞きました。

 私たちの周りには面白いことがいっぱいあります。お子さんが小さい頃は、それを親子で存分に楽しむという生活を重ねてください。生活を楽しんでいるお母さんやお父さんのそばで、お子さんは、ゆっくりじっくり「自分の好き!」を見つけることができると思います。(文京区立お茶の水女子大学こども園・前園長、お茶の水女子大学特任教授)

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