ヤングケアラーに「もっと周りを頼って」と伝えるために 埼玉県教委が教員向け指導案 10の授業例を紹介

浅野有紀 ( 2023年5月14日付 東京新聞朝刊)
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ヤングケアラーについて教えるポイントをまとめた資料集

 大人の代わりに家事や介護などを日常的に担う「ヤングケアラー」への理解を児童・生徒に深めてもらおうと、埼玉県教育委員会は教員向けに指導案の資料集を作成した。これまで展開してきた当事者を招く出前授業に加え、日常の授業の中で「つらいときは周りを頼って」と伝えていく試み。独自の授業づくりに取り組む高校を募集している。

「家族だけでなく、自分も大切に」

 資料集は「ヤングケアラー授業デザインキット」。対象は小学校全学年、中学校は公民を履修する3年生、高校は全学年。生活科や道徳科など、10の授業展開例を紹介している。作成したのは、2021年度にヤングケアラーについての研究授業に取り組むなどした小中高校教諭10人。大学教授監修のもと、昨年5月から協議を重ねてきた。

 資料集は、児童・生徒に子どもの権利を知ってもらい、家族だけでなく同時に自分も大切にすることの重要性を理解してもらうなど、4つの視点を授業のポイントとして掲げる。

力を借りることも家族のためになる

 例えば、小学5年生が道徳の授業で学ぶ主題「かけがえのない家族」では、家族の一員として進んで役に立とうとする心情を育てることを狙いとし、手術をして料理の味が分からなくなった母親の代わりに「ぼく」が味付けを担うことを提案する物語を教材として使っている。

 この主題について、家族の手伝いをするうちにつらくなった場合にどうすべきかも合わせて考えてもらうため、資料集では「つらいと感じたときは家族以外にも頼れる先があること」を挙げ、「家族以外の力を借りることも家族のためになる」という視点を付け加えた。

全小中高に配布 独自授業の高校募る

 埼玉県教委は、資料集の電子データを3月に全小中高校に配布。小中学校には、資料集を参考にした授業実施を呼びかけるとともに、高校には学校独自の授業をつくってもらおうと50校を目標に募っている。

 埼玉県は2020年3月、全国に先駆けてケアラー支援条例を制定。同年、高校2年生を対象にした調査では、回答者の4.1%に当たる1969人がヤングケアラーか過去に経験があったと回答した。高田直芳教育長は「今は10の授業例しかないが、他の教科でも取り扱えると思うので事例を集めて横断的に展開していきたい」と話している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年5月14日

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